研究課題/領域番号 |
20H03475
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
中野 裕康 東邦大学, 医学部, 教授 (70276476)
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研究分担者 |
寺井 健太 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20616073)
柳川 正隆 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70609792)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ネクロプトーシス / FRET / イメージング / DAMPs / トランスジェニックマウス / シスプラチン / 1分子イメージング |
研究実績の概要 |
1) 野生型マウスにシスプラチンを投与すると血清BUNやCreatinineが上昇し、それに伴いリン酸化RIPK3陽性細胞と活性化型カスパーゼ3陽性細胞が出現し、投与2日後にピークとなった。そこで樹立したSMART トランスジェニック(Tg)マウスにシスプラチンを投与し、48時間後に多光子顕微鏡を用いてFRET解析を行った。シスプラチン投与によりまず近位尿細管の閉塞が誘導され、さらにその後で一部の尿細管上皮細胞でFRET/CFP比が上昇することが明らかとなった。ネクロプトーシスの実行遺伝子であるRipk3を欠損させたSMART Tgマウスにシスプラチンを投与したところ、SMART Tg;Ripk3-/- マウスでは尿細管上皮の傷害はおこるものの、尿細管の閉塞はみられずFRET/CFP比の上昇も見られなかった。 2) MLKLの細胞膜上の動態の 1分子イメージングとミトコンドリアの細胞外への放出を同時にイメージングするために、MLKL-HaloTag発現細胞に、ミトコンドリアターゲッテイングシグナル配列を付加したMito-mCherryを同時に発現させ、ミトコンドリアを可視化できる細胞を樹立した。予備実験としてMito-mCherryを発現する細胞にネクロプトーシスを誘導すると、細胞膜障害に伴いmCherryのシグナルが細胞外へと放出されることを確認した。今後この細胞を用いてMLKLの1分子イメージングとMito-mCherryの細胞外放出についてのイメージングを同時に行う予定である。 3)ネクロプトーシスに伴い放出されるDAMPsをin vitroおよびin vivoで可視化するために、HMGB1-mCherryトランスジェニックマウスを樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)COVID-19の拡大のために昨年度は、マウスを京都大学の松田研究室に移動させることができず、実験が中断していた。本年度は、シスプラチン腎障害モデルを用いてin vivoのイメージングに成功しており、順調に実験を行うことができた。現在論文を投稿予定である。 2) ネクロプトーシス細胞のMLKLの1分子イメージングについては、やや遅れていたが、1分子イメージングにより見られるMLKLの凝集体と細胞内容物であるDAMPsの放出の同時イメージングをするためのツールを作成することができたことから、今後研究が順調に進捗すると考えられる。 3)ネクロプトーシスに伴い放出されるDAMPsをin vitroおよびin vivoで可視化するために、HMGB1-mCherryトランスジェニックマウスを樹立した。このマウスの腹腔マクロファージを採取して、HMGB1-mCherryのネクロプトーシスやパイロトーシスに伴う放出のイメージングを今後行う予定であり、この点については予想以上の進捗が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1) DAMPsの1種類であるHMGB1-mCherryをin vitroおよびin vivoで可視化することのできるHMGB1-mCherry Tgマウスが樹立することができた。このマウス由来のマクロファージを用いてネクロプトーシスやパイロトーシス時に放出されるIL-1betaやHMGB1-mCherryの放出のkineticsなどをLCI-S(live cell imaging for secretion)を用いて詳細な解析を行う予定であり、今後予想以上に研究は進捗すると考えられる。 2)さらにin vivoにおけるネクロプトーシスのFRET解析と同時にHMGB1の細胞外への放出をイメージングするために、SMART; HMGB1-mCherry Tgマウスを樹立する予定である。
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