研究課題/領域番号 |
20H03476
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 健太郎 東北大学, 農学研究科, 教授 (30401178)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マラリア / メンブレントラフィック / ロゼット化 / シクエストレーション |
研究実績の概要 |
マラリア対策を目的とした研究開発の大部分は、スクリーニングによる薬剤開発に特化しており、マラリア原虫と宿主との相互作用の観点から、病態発症のメカニズムに挑む研究アプローチはほとんどとられていない。つまり、マラリア感染赤血球内で形作られる赤血球蛋白質や原虫蛋白質の輸送システム、赤血球膜に提示された蛋白質と宿主の血管内皮蛋白質との相互作用、というマラリアの病態発症や重症化に直接関わるメカニズムの解明についてはなおざりの状態である。本研究の目的は、マラリアの病態の重症化の原因となる感染赤血球のロゼット化と血管内皮との癒着、結合(シクエストレーション)を担当する原虫蛋白質群や宿主細胞蛋白質群が、感染赤血球内でのメンブレントラフィックによって輸送され、感染赤血球膜に提示される機構の解明を行うことである。 本年度は、マラリア原虫のマウレル裂構成蛋白質のプロテオーム解析で同定した原虫蛋白質の感染赤血球内における挙動解析を行った。 (i)マウレル裂の質量解析で得られたプロテオーム解析データを整理し、遺伝子オントロジー解析を行い、蛋白質の輸送関連因子の絞込みを行った。 (ii)輸送蛋白質が持つとされるPEXELモチーフ(RxLx(D/E/Q))をアミノ酸配列に保持する蛋白質とモチーフを持たない蛋白質(non-PEXEL)に選別した。 (iii)(i)、(ii)で絞り込んだ原虫蛋白質が実際にマウレル裂へと輸送されるかを検証するため、GFPと目的の原虫蛋白質の融合蛋白質を発現するプラスミドを電気穿孔により、原虫内に導入し、赤血球内における挙動を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マラリア原虫のマウレル裂構成蛋白質のプロテオーム解析で同定した原虫蛋白質の感染赤血球内における挙動解析を行えたため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は局在解析によりマウレル裂へと輸送されていることが同定されたマラリア原虫の蛋白質をコードする遺伝子の欠損変異虫体の作出を行う。 (i)同定した原虫蛋白質をコードする遺伝子について、熱帯熱マラリア原虫を用いて、遺伝子欠損変異虫体(ノックアウト原虫)を作出する。 (ii)ノックアウト原虫の表現型(増殖効率、赤血球侵入効率、形態等)を野生株と比較解析する。 本解析においては、電気穿孔による相同組換え系により、薬剤耐性遺伝子を原虫のゲノムに組込んだ後、組換わった原虫のみを選り分ける必要がある。また、原虫の生存に必須の遺伝子についてはノックアウトできない。ノックアウト原虫の作製には通常数ヶ月を要する。本実験系はすでに確立済みであり、複数のノックアウト原虫の作出に成功している。
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