研究課題/領域番号 |
20H03478
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
前川 洋一 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10294670)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マラリア / クロロキン / 宿主適応免疫系 / Bリンパ球 / 抗体 |
研究実績の概要 |
マラリアの治療には感染ステージによっていくつか治療薬剤(抗マラリア薬)が存在し、その有効性が示されている。特にマラリアの症状が出現する赤内期にはクロロキンやメフロキン、アルテミシニンなど多くの治療薬がある。一般的に、これらの薬剤にはマラリア原虫を直接殺滅する作用があり、その作用がマラリア治療に有効であると考えられている。一方、我々は従来の研究から、ある免疫不全マウスでは赤内期マラリアに対してクロロキンが全く効果を示さないとの知見を得た。このことは、マウスマラリア赤内期における抗マラリア薬の作用機序(抗マラリア治療効果)には宿主免疫機構が必須であることを示唆している。本研究では、我々の知見に基づき「抗マラリア薬の生体内での作用機序における宿主免疫系の役割」について検証する。また、「生体内での抗マラリア薬耐性原虫の出現機序とその薬剤耐性機構」についても検証する。 本年度は生体内での抗マラリアやくの統合的な作用に必須の宿主免疫系の同定を試みた。その結果、 1)適応免疫系を欠くマウスでは非致死性P. yoelii(PyXNL)赤内期感染に対するクロロキン投与により原虫血症の低下が認められる。しかし、顕微鏡レベルで原虫血症が認められなくなりクロロキン投与を中止すると再び原虫血症が出現した。 2)B細胞を欠くマウスではPyXNL赤内期感染に対しクロロキンによるparasitemia低下が認められる。しかし、顕微鏡レベルで原虫血症が認められなくなりクロロキン投与を中止すると再び原虫血症が出現した。 3)抗体を欠くマウスではPyXNL赤内期感染に対するクロロキン投与が全く効果を示さなかった(ほとんどparasitemiaが低下しなかった)。 以上の結果から、生体内でのクロロキンは抗体存在下で効果を発揮し、その効果は宿主適応免疫系、特にB細胞の存在が必要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に用いるマウスの作出に遅れがあったため、年度はじめには研究の進展に遅れが生じた。そのため、今年度の研究成果は生物学的現象の確認に留まり、その現象の分子基盤を解明する段階に進むことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究から、抗体を産生しないマウスではクロロキンが全く奏功しない一方、B細胞そのものを欠損するマウスではクロロキンは一時的には効果を発揮することが確認できた。このことから我々は、観察したマウスにおいてはクロロキンがparasitemiaを低下させる現象にB細胞が負に関与しているのではないかとの仮説をたて、その検証を行う 1)B細胞がクロロキンの代謝を促進している等、クロロキンそのものと直接関係している可能性について・・・野生型、抗体欠損、B細胞欠損など各種免疫不全マウスの生体内でのクロロキンの血中濃度を計測し、代謝等が亢進していないかを確認する。抗体欠損マウスでクロロキンが有効血中濃度に達していない、あるいは速やかに低下するなどが観察された場合には、抗体欠損マウスで欠損している遺伝子が当該事象に関連していると考えられるため、その関連について解析を進める。 2)制御性B細胞(Breg)等、B細胞がクロロキンによる殺原虫作用を抑制している可能性について・・・B細胞の一部には免疫機構を負に制御する制御性B細胞(Breg)(制御性T細胞のB細胞版)が存在する。抗体欠損マウスではBregがクロロキンを起点とする宿主免疫機構を介した統合的な殺原虫作用を抑制していることも考えられる。そこで、Bregを生体内から除去したりBregの抑制作用を介在するサイトカインを中和したりすることでクロロキンの殺原虫作用が回復するか否かを検討する。殺原虫作用が回復した場合には、なぜ抗体欠損マウスではBregがクロロキン作用を抑制するのかについてBreg数や活性について検証するとともに、遺伝子発現などを網羅的に解析する。
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