研究課題/領域番号 |
20H03480
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
鳥居 本美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 特命教授 (20164072)
|
研究分担者 |
橘 真由美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00301325)
石野 智子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40402680)
入子 英幸 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (60346674)
伊藤 大輔 鳥取大学, 医学部, 助教 (80609298)
カレトン リチャード 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (10503782)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 熱帯熱マラリア / ワクチン / 伝搬阻止 / 雄性生殖体 / 単クローン抗体 |
研究実績の概要 |
申請者らのネズミマラリア原虫を用いた先行研究において高い伝搬阻害活性が示されたミクロガメート表面タンパク質(MiGS)の熱帯熱マラリア原虫における相同体(PfMiGS)の中で、更に高い抗原性が示された分子内領域(Region 6)を標的とする単クローン抗体の作成を継続して行なった。昨年度中にPfMiGSのRegion6の組換えタンパク質(rPfMiGS-R6)を用いて5回の免疫を行なっていた2匹のマウスに2回の追加免疫を行った後に、マウス血清を採取し、rPfMiGS-R6を抗原とするELISA法で抗体価の上昇を測定した。高い抗体価の上昇が確認されたマウス1匹を用いてハイブリドーマを作成した。単クローン抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、rPfMiGS-R6を抗原とするELISA法によって行った。3次のスクリーニングを実施した結果、rPfMiGS-R6に特異的に反応する単クローン抗体を産生する5個のハイブリドーマ株を樹立することに成功した。最も高い反応性を示した単クローン抗体のサブクラスはIgG1であった。これと並行して、単クローン抗体の抗原反応特異性をより正確に検定することを目的として、陽性コントロールとしてPfMiGSにMycタグを付加した遺伝子改変熱帯熱マラリア原虫(PfMiGS::Myc)と陰性コントロールとしてのPfMiGS欠損熱帯熱マラリア原虫(PfΔPfMiGS)の作出を行った。そして種々の条件検討を行なって、野生株の熱帯熱マラリア原虫に加え、PfMiGS::MycおよびPfΔPfMiGSの遺伝子改変原虫においても、生殖母体そして一部は生殖体まで安定的に発育させることに成功した。これらの原虫と作成した単クローン抗体を用いて、PfMiGSの発現様式などの詳細な性状解析を行うことが可能になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標としていたPfMiGSに特異的に反応する単クローン抗体を作成することに成功した、また、単クローン抗体の反応特異性を検討するために取り組んだPfMIGSにMycタグを付加した遺伝子改変熱帯熱マラリア原虫およびPfMiGS欠損熱帯熱マラリア原虫の作出にも成功し、これらの原虫を生殖母体まで確実に培養できるようになったことから、本年度は概ね順調に進展させることが出来たと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、作成した熱帯熱マラリア原虫のMiGS(PfMiGS)に対する単クローン抗体の原虫分子に対する反応性の解析、及び蚊体内における伝搬阻止活性の測定など、伝搬阻止ワクチンの実用化に繋がる基礎研究を行う。 そのために以下の研究を実施する。(1)PfMiGSにMycタグを付加させた遺伝子改変原虫を用いて抗Myc抗体と単クローン抗体との反応性を比較検討することで、単クローン抗体の反応特異性を検討する。(2)単クローン抗体を用いて熱帯熱マラリア原虫の生殖母体から生殖体までの各発育段階におけるPfMiGSの原虫細胞内動態を詳細に解析する。(3)培養した熱帯熱マラリア原虫の生殖母体を含む赤血球を生殖母体の活性化を促す培養液に抗MiGS単クローン抗体を添加したものに再浮遊させて短時間培養し、活性化生殖母体からのmicrogamete放出およびその後の運動能に及ぼす単クローン抗体の影響をin vitroで検討する。(4)熱帯熱マラリア原虫の生殖母体を含む感染赤血球と抗PfMiGS単クローン抗体又は陰性コントロール単クローン抗体を混合したものを、人工吸血装置を用いてマラリア媒介蚊に吸血させ、温度管理されたインキュベーター内で10日間飼育した後に蚊の中腸を取り出し、中腸に形成されるオーシスト数を計測することで、蚊体内における単クローン抗体の原虫発育阻害効果を検討する。
|