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2020 年度 実績報告書

百日咳菌の咳誘発因子の機能解析と咳発作発症メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 20H03485
研究機関大阪大学

研究代表者

堀口 安彦  大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00183939)

研究分担者 西田 隆司  大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20845200)
平松 征洋  大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (90739210)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード百日咳 / 咳発作
研究実績の概要

本研究課題では、咳発作に関わる 3 種類の百日咳菌由来分子(A, B, C)の既知の機能と咳反射系路との関わりを検証することでそれぞれの病原因子が関与する咳反射応答メカニズムの素過程を見つけ出し、その結果を総合して百日咳による咳発作のメカニズの全体像に迫るという戦略を立てている。
当該年度では、百日咳菌由来A因子とB因子の咳発作における役割を検討した。A因子の特異受容体分子のノックアウトマウスを用いてA-C因子投与による咳発作実験を行ったところ、このマウスの発咳数は野生型マウスと比べて著しく減少した。同時に、野生型マウスではA-C因子投与にともなって気道洗浄液中のブラジキニン濃度が上昇したが、この現象はノックアウトマウスでは著しく抑制されていることがわかった。ブラジキニンは炎症性メディエーターとして知られており、カリクレイン/キニン系カスケードを介して高分子キニノーゲンから生成される。そこで、高分子キニノーゲンノックアウトマウスを作製し、これを用いてさらに咳発作実験を行った結果、キニノーゲンノックアウトマウスの発咳数は著しく低下した。一方、B因子はブラジキニンの生成に関わるカリクレインの作用を阻害するC1エステラーゼインヒビターをさらに阻害することが報告されている。B因子はマウスの発咳のトリガーにはならず、A因子とC因子による咳誘導作用をさらに増強するが、キニノーゲンノックアウトマウスではこのB因子の増強作用が見られなかった。またC1エステラーゼインヒビターと相互作用できないB因子の変異タンパクは発咳数増強作用も失っていた。以上の結果から、百日咳菌感染による咳発作は、感染局所におけるA因子によるブラジキニンの生成がトリガーとなりうること、B因子は生成ブラジキニン量を高度に維持することによって発咳を増悪させている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当該年度で計画していた、ノックアウトのマウスの作製を伴ったA因子とB因子の作用解析が遅滞なく進み、それらの結果を総合することで咳発作メカニズム一端を明らかにすることができた。さらに宿主側の炎症性メディエーターであるブラジキニンが咳発作に関与するなど、今後、ブラジキニンの下流の咳反射系路を探索することを示唆する重要な知見を得ることができた。

今後の研究の推進方策

次年度は、A因子とB因子の作用により生成されたブラジキニンの下流で起こりうる咳反射に関わる刺激系路の探索と、その刺激系路におけるC因子の関与を検討する。 ブラジキニンの生理学的受容体は二種類(B1RとB2R)存在する。またブラジキニンと受容体の相互作用の下流には、咳反射に関わる種々の生理活性物質および神経の興奮を惹起するイオンチャネルが知られている。そこで、現在利用可能な、それぞれに対する阻害剤をマウスに投与した後に百日咳菌感染(あるいは菌体破砕液投与)による咳応答の程度を検討する。その結果によって、ブラジキニンの下流で咳応答に関与する分子群および咳応答の刺激伝達メカニズムを推定する。さらに関与する分子のノックアウトマウスを使用するなどして、推定した咳応答系路を確認する。C因子は標的細胞のGタンパク質共役型受容体(GPCR)経由の情報伝達系路を撹乱することがわかっている。ブラジキニン受容体はGPCRに分類されるため、ブラジキニンを介した情報伝達系路がC因子によって変調するかどうか、C因子の作用が推定した分子群の機能に影響するかどうかを、細胞内カルシウムイオン測定やパッチクランプ法などを駆使した細胞の活動電位測定などの神経生化学的な手法で解析する。これらの結果を総合し、百日咳における咳反射系路を特定する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] The Bartonella autotransporter BafA activates the host VEGF pathway to drive angiogenesis2020

    • 著者名/発表者名
      Tsukamoto Kentaro、Shinzawa Naoaki、Kawai Akito、Suzuki Masahiro、Kidoya Hiroyasu、Takakura Nobuyuki、Yamaguchi Hisateru、Kameyama Toshiki、Inagaki Hidehito、Kurahashi Hiroki、Horiguchi Yasuhiko、Doi Yohei
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 11 ページ: 3571

    • DOI

      10.1038/s41467-020-17391-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification of the minimum region of Bordetella pertussis Vag8 required for interaction with C1 inhibitor2020

    • 著者名/発表者名
      Onoda Naoki、Hiramatsu Yukihiro、Teruya Shihono、Suzuki Koichiro、Horiguchi Yasuhiko
    • 雑誌名

      Microbiology and Immunology

      巻: 64 ページ: 570~573

    • DOI

      10.1111/1348-0421.12799

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Expression of small RNAs of Bordetella pertussis colonizing murine tracheas2020

    • 著者名/発表者名
      Hiramatsu Yukihiro、Suzuki Koichiro、Motooka Daisuke、Nakamura Shota、Horiguchi Yasuhiko
    • 雑誌名

      Microbiology and Immunology

      巻: 64 ページ: 469~475

    • DOI

      10.1111/1348-0421.12791

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Bordetella Dermonecrotic Toxin Is a Neurotropic Virulence Factor That Uses CaV3.1 as the Cell Surface Receptor2020

    • 著者名/発表者名
      Teruya Shihono、Hiramatsu Yukihiro、Nakamura Keiji、Fukui-Miyazaki Aya、Tsukamoto Kentaro、Shinoda Noriko、Motooka Daisuke、Nakamura Shota、Ishigaki Keisuke、Shinzawa Naoaki、Nishida Takashi、Sugihara Fuminori、Maeda Yusuke、Horiguchi Yasuhiko
    • 雑誌名

      mBio

      巻: 11 ページ: 03146-19

    • DOI

      10.1128/mBio.03146-19

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] The mechanism of pertussis cough revealed by the mouse-coughing model2021

    • 著者名/発表者名
      平松 征洋、鈴木 孝一朗、西田 隆司、堀口 安彦
    • 学会等名
      第94回日本細菌学会総会
  • [学会発表] 宿主感染時に高発現する百日咳菌small RNAの機能解析2020

    • 著者名/発表者名
      平松 征洋、鈴木 孝一朗、堀口 安彦
    • 学会等名
      第73回日本細菌学会関西支部総会
  • [学会発表] マウスモデルから見た百日咳における咳発作発症機構2020

    • 著者名/発表者名
      平松 征洋、鈴木 孝一朗、西田 隆司、堀口 安彦
    • 学会等名
      第73回日本細菌学会関西支部総会
  • [学会発表] 新規発光システムを用いた気管支敗血症菌感染のin vivoイメージング手法の構築2020

    • 著者名/発表者名
      玉木 優生、西田 隆司、平松 征洋、堀口 安彦
    • 学会等名
      第73回日本細菌学会関西支部総会
  • [学会発表] Bordetella bronchiseptica utilizes Acanthamoeba catellanii as a temporal niche2020

    • 著者名/発表者名
      Dendi Krisna Nugraha、山口 博之、堀口 安彦
    • 学会等名
      第73回日本細菌学会関西支部総会
  • [学会発表] Modification of Bordet-Gengou agar medium for cultivation of bordetellae2020

    • 著者名/発表者名
      平松征洋、岡真優子、堀口安彦
    • 学会等名
      第93回日本細菌学会総会

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公開日: 2021-12-27  

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