研究実績の概要 |
本研究課題では、咳発作に関わる 3 種類の百日咳菌由来分子(百日咳毒素(PTx), Vag8, リポオリゴサッカライド(LOS))の既知の機能と咳反射系路との関わりを検証することでそれぞれの病原因子が関与する 咳反射応答メカニズムの素過程を見つけ出し、その結果を総合して百日咳による咳発作のメカニズの全体像に迫るという戦略を立てた。 前年度までに、百日咳菌のLOSがTLR4を介してカリクレイン・キニン系を刺激して炎症性メディエーターのブラジキニンの生成を誘導すること、Vag8はカリクレイン・キニン系の負の制御因子であるC1エステラーゼインヒビターの作用を抑制してブラジキニンの生成を亢進させること、PTxはブラジキニンが作用するブラジキニン2型受容体(B2R)のシグナルを伝達する三量体GTP結合タンパク質であるGiの経路を不活化して、下流の咳反射に関わる活動電位を発生させるイオンチャネルTRPV1 の刺激感受性を亢進させることがわかった。B2Rと共役するGTP結合タンパク質にはGiの他にGsとGqが知られている。GqとGsはTRPV1の刺激感受性を亢進させ、かつPTxの作用は受けないので、ブラジキニン刺激によりTRPV1の刺激感受性は著しく亢進すると考えられた。これらの仮説をパッチクランプ法を用いた電気生理学的手法およびTRPV1依存的カルシウム動員の生化学的検出法を用いて証明した。以上の成果をmBio 13: e03197-21, 2022において論文発表することができた。これらの成果はさらに、mBio 13: e00917-22, 2022において他の研究者による評論記事で紹介された。
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