研究課題/領域番号 |
20H03486
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
小椋 義俊 久留米大学, 医学部, 教授 (40363585)
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研究分担者 |
小林 郁雄 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20576293)
梶谷 嶺 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40756706)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腸管出血性大腸菌 / 志賀毒素 / ゲノム / 進化 / 病原性 |
研究実績の概要 |
本年度は、ウシの消化管のどの部位に大腸菌が生息しているかを解析した。食肉検査所の協力を得て、脱臼により病畜として処理される3頭のウシ(ホルスタイン2頭と黒毛和牛1頭)の解体作業に立ち会い第1胃、第2胃、第3胃、第4胃、小腸、大腸から内容物を採材した。各サンプルからビーズ法によりDNAを抽出した。16SのV3-V4領域を増幅し、illumina MiSeqでシーケンスを行った。菌叢解析の結果、いずれのウシにおいても第1胃、第2胃、第3胃、第4胃の菌叢は類似度が高かったが、小腸と大腸はそれぞれ菌叢が大きく異なっていた。各サンプルについて、大腸菌の存在割合を調べたところ、第1胃には、3頭とも0.002%前後の割合で大腸菌が検出された。第2胃と第3胃では第1胃より割合は低くなったが、第4胃と少量においては大腸菌の割合が増加した。最も大腸菌が多かった個体では、第4胃で0.17%、小腸で21%の大腸菌が検出された。大腸における大腸菌の割合は、3頭のウシのそれぞれで0.002%, 0.021%, 0.032%の存在割合であった。これらのことから、ウシの消化管のほぼすべてで大腸菌は検出されるものの小腸に最も多い傾向があることがわかった。現在、各部位に存在する大腸菌の分離を行いクローンレベルでの違いが存在するかどうかを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、デジタルPCRを用いてウシ糞便中の大腸菌全体とそのうち志賀毒素や3型分泌装置を有する腸管出血性大腸菌の存在割合を明らかにする予定であった。しかし、デジタルPCRを実施予定であった研究代表者が6月から大学を異動しており、新たな研究環境ではデジタルPCRを実施できなくなった。早急にデジタルPCRを実施できる体制の構築を進めつつ、まずは16Sメタゲノム解析による予備データの収集に努めた。また、次年度以降に実施予定であった研究を先に進める準備も始めた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きデジタルPCRを行える環境の構築を行う。また、ウシ腸内環境において、蓄積されている新たな病原因子候補の探索も進める。これまでの研究から大腸菌にとって病原因子を有することがウシ腸内での生存に有利となる可能性が示唆されている。既知の病原遺伝子以外で、ウシ由来大腸菌が水平伝播により獲得している遺伝子群の抽出とその機能解析を行う。まず、既知の病原遺伝子に加えて、3型分泌装置保有株で統計的優位に獲得されている遺伝子をパンゲノムワイド関連解析(Pan-Genome Wide Association Study;Pan-GWAS)により抽出する。次に、それらの中から、ファージやプラスミドなどにより運び込まれている遺伝子を選別し、さらにその発現が3型分泌装置と同じ制御を受けていることを確認する。さらに、非病原性大腸菌で過剰発現させ、細胞培養を用いた実験系でその病原性への関与を明らかにする。
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