研究課題/領域番号 |
20H03487
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
松崎 吾朗 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (30229455)
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研究分担者 |
松永 哲郎 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00723206)
松本 壮吉 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30244073)
高江洲 義一 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (60403995)
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90359985)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結核菌 / 病原因子 / ミトコンドリア / IL-1β |
研究実績の概要 |
本研究では、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)の産生するinterleukin (IL)-1β産生を抑制する病原因子、Zinc metalloprotease-1 (Zmp1)の病原性の分子機構解明を目指している。申請者らは、Zmp1がミトコンドリアの電子伝達系複合体Iの構成分子であるNdufa13に結合することを見出しており、この所見を手掛かりとして、Zmp1のミトコンドリアに対する影響を検討した。その結果、①M. tuberculosis var. BCGのZmp1欠損株(⊿Zmp1 BCG)をマクロファージに感染させると、野生株では抑制されていたNLRP3依存性IL-1β産生が回復した。②⊿Zmp1 BCGをFlag標識Zmp1で相補したZmp1-Flag BCGをマクロファージに感染させると、ミトコンドリア内に抗Flag抗体で染色されるZmp1が検出された。③CRISPR-Cas9システムで作成したNdufa13欠損マウスマクロファージ細胞株J774(⊿Ndufa13 J774)に⊿Zmp1 BCG、ATP+LPSなどのNLRP3インフラマソーム活性化刺激を与えると、IL-1β産生が消失していた。④前記のIL-1β産生消失がNLRP3インフラマソーム活性化の抑制によるものであることが生化学的に示された。⑤⊿Ndufa13 J774あるいはZmp1遺伝子発現プラスミド導入細胞では、ミトコンドリア膜電位の低下が認められ、これがNLRP3インフラマソーム活性化の阻害を引き起こすと考えられた。 以上の結果から、Zmp1のIL-1β産生抑制機構は、ミトコンドリア複合体Iの構成分子Ndufa13への結合とミトコンドリアの膜電位形成阻害に関連すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結核菌由来病原因子Zmp1による免疫抑制機構について、ミトコンドリア電子伝達系の分子が標的であること、その分子がNLRP3に依存したIL-1β産生に必須であること、さらにZmp1がミトコンドリア膜電位を障害することを明らかにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
結核菌Zmp1による免疫抑制機構として、NLRP3インフラマソーム抑制とIL-1β産生抑制以外の経路が存在することが、本年度の研究で示唆された。この点を解明するとともに、Zmp1欠損結核菌により生体内で誘導される感染防御応答、またZmp1の標的であるNdufa13の免疫応答制御における役割について、より広範な解析を進め、結核菌ー宿主相互間関係における病原因子Zmp1の役割を解明する。
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