研究課題
腸内細菌由来代謝産物は、インフルエンザウイルス特異的な免疫応答の誘導に役立っていることが分かっている。一方、インフルエンザウイルスの感染の場となる上気道にも常在菌が生息しているが、この上気道常在菌がウイルス特異的な免疫応答の誘導やワクチン効果に与える影響は不明である。そこで本研究では、上気道常在菌がインフルエンザウイルス特異的な免疫応答の誘導やワクチン効果に与える影響を解析した。マウスの上気道常在菌を抗生物質で死滅させるとインフルエンザウイルス感染後に誘導されるウイルス特異的な抗体応答が増加することを見出した。MyD88欠損マウスではこの効果が認められなかったことから、死滅した上気道常在菌由来の病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns, PAMPs、)がアジュバントとして機能し、ウイルス特異的な抗体応答を増加させていることが分かった。またマウスやヒトの鼻腔内に生息する常在菌数は口腔内の1/10~1/100と少ないことが分かり、スプリットワクチンだけを経鼻投与しても十分な抗体を誘導できない原因が上気道常在菌の数や質によるものであることが示唆された。そこで培養した口腔菌をワクチンと混合して経鼻投与すると、ワクチン接種群ではウイルスに対する抗体が誘導され、インフルエンザウイルスやSARS-CoV-2の増殖量が有意に抑制されていることを確認した。本研究成果は上気道粘膜でインフルエンザウイルスやSARS-CoV-2の感染そのものを阻止する経鼻ワクチンの開発に役立つと期待される。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 13 ページ: 4033
10.1038/s41598-023-30690-0