研究課題
本研究課題では、生体に近い3次元複合細胞モデル系やHIV潜伏感染細胞モデル等を用いて、ウイルスの遺伝子発現や増殖・伝播効率を著しく変化させる外的および内的ストレスを明らかにする。続いて、それらのストレス応答にともない誘導・活性化され、かつウイルスの複製や伝播に関与する細胞内シグナルや宿主因子群を探索することで、新たな感染制御機構を明らかにする。さらには、これらの結果を数理モデル化し時空間的に解析を行う。候補因子群が複数同定された場合には、バイオインフォマティクスを用いて、因子群の関連付けや上流因子の推定を行うことで高精度な制御機構の解明に繋げる。本年度はHIVの潜伏化に関与する細胞外要因として、低酸素応答分子メカニズムを標的とした研究を実施した。まずは、HIV-2アクセサリータンパク質Vpxがフォン・ヒッペル・リンドウ腫瘍抑制タンパク質(von Hippel-Lindau tumor suppressor protein; VHL)との相互作用により、ユビキチン化され、プロテアソームにより分解されることを見出した。また、Vpx強制発現細胞では、正常酸素分圧下においてVHLによるHIF-1αの分解が阻害され低酸素応答が誘導されていた。一方、Vpxを欠如したHIV-2では野生株と比較して潜伏化が起こりにくかったが、低酸素環境下においては潜伏化が促進されたことから、低酸素応答シグナル及び関連因子がHIV-2の潜伏化に寄与することが示唆された。網羅的な遺伝子発現解析及びその後の機能解析により、低酸素誘導因子HIF-1αにより複数の長鎖ノンコーディングRNA (lncRNA)が誘導され、そのうちの一部が、HIV-2の転写制御領域に結合し、エピジェネティックな調節機構によりHIV-2の遺伝子発現を抑制することが明らかにした。これらの結果について数理モデルを用いてその妥当性を検証した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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