研究課題/領域番号 |
20H03501
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
生田 宏一 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (90193177)
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研究分担者 |
榛葉 旭恒 京都大学, 医学研究科, 助教 (30812242)
谷一 靖江 京都大学, 医学研究科, 助教 (50432331)
崔 广為 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (70791276)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然免疫 / サイトカイン / 微小環境 / IL-15 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
自然リンパ球、NK細胞、NKT細胞などの自然免疫系リンパ球は、感染免疫応答、抗腫瘍免疫、炎症免疫疾患などにおいて重要な働きをしている。自然免疫系リンパ球の分化・維持・機能にはIL-15が必須であるが、どの細胞が作るIL-15に依存するのかという問題は未解決である。本研究は、独自に作製した細胞特異的IL-15欠損マウスを用いて、NK細胞とNKT細胞の分化・維持・機能を支える骨髄と胸腺のIL-15産生性免疫微小環境を同定し、その感染防御・抗腫瘍免疫・慢性炎症における機能を明らかにする。そのために、A.自然免疫系リンパ球を支える骨髄IL-15産生性微小環境の同定と病態における役割、B.胸腺IL-15産生性微小環境に依存する新規iNKT細胞の機能と病態における役割、の2つの研究項目について研究を行った。 骨髄で分化するNK細胞については、予想に反し造血細胞が産生するIL-15に依存していることを明らかにした。また、骨髄内で散在性のNK細胞とクラスターを形成するNK細胞の2種類の集団が存在することを明らかにした。今後は、クラスターを形成するNK細胞集団の免疫学的意義の解明などをおこなう。胸腺で分化するiNKT細胞については、CD244陽性iNKT細胞が胸腺上皮胞から産生されるIL-15に依存して分化すること、この集団が末梢では肺、脂肪組織、腸管粘膜固有層に多く分布すること、IFN-gやgranzyme Bを高発現しておりNK細胞に性質が近いことなどを明らかにした。今後は、この新規iNKT細胞の機能の解析をおこなう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目A. 自然免疫系リンパ球を支える骨髄IL-15産生細胞の同定: CAR細胞、血管内皮細胞、単球、樹状細胞、マクロファージがIL-15を産生する。Lepr-Cre(CAR細胞)、Tie2-Cre(血管内皮細胞)、Vav-Cre(造血細胞)、CD11c-Cre(樹状細胞)、LysM-Cre(マクロファージ)とIL-15-floxマウスを交配した細胞特異的IL-15欠損(IL-15 cKO)マウスを作製し、骨髄のリンパ球共通前駆細胞、NK前駆細胞、NK細胞の数を比較した。その結果、造血細胞や骨髄球に特異的なIL-15欠損マウスにおいてNK前駆細胞とNK細胞が顕著に減少していたが、CAR細胞や血管内皮細胞に特異的なIL-15欠損マウスにおいては変化がなかった。また、骨髄におけるNK細胞の分布を免疫組織染色で調べたところ、骨髄内に散在するNK細胞とクラスターを形成して存在するNK細胞の2種類の集団が存在していた。 研究項目B. 胸腺IL-15産生性微小環境に依存する新規iNKT細胞の遺伝子発現と体内動態の解析: iNKT細胞は胸腺でIL-15に依存して分化する。FoxN1-Cre(胸腺上皮細胞)IL-15 欠損マウスの胸腺においてCD244陽性iNKT細胞が特異的に減少し、この集団が末梢では肺、脂肪組織、腸管粘膜固有層に多く分布していた。また、胸腺と肺からCD244陽性とCD244陰性のiNKT細胞をソートしRNA-seq法で発現遺伝子を比較したところ、CD244陽性iNKT細胞はIFN-gやgranzyme Bを高発現しておりNK細胞に性質が近かった。さらに、これら2つのiNKT細胞の体内動態の違いを解析するためにパラビオーシス実験をおこなったところ、CD244陽性iNKT細胞が頻繁に体内循環している一方、CD244陰性iNKT細胞は組織常在性であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目A: 種々のIL-15産生細胞とNK前駆細胞やNK細胞が近接しているかを透明化処置と免疫組織染色にて解析する。また、単離した未熟骨髄球、単球、樹状細胞、マクロファージとNK細胞を共培養することで、NK細胞の維持を担うIL-15産生細胞を精査する。さらに、散在性のNK細胞とクラスターを形成するNK細胞で性質の違いがあるかどうかを、ケモカイン受容体の阻害剤やNK細胞特異的なケモカイン受容体欠損マウスを用いて解析する。 研究項目B: B16F10メラノーマの肺転移(播種)モデルにおいて、iNKT細胞が分泌するIFN-gがNK細胞を活性化して、腫瘍細胞の排除に重要な働きをする。そこで、肺のCD244陽性iNKT細胞が減少する胸腺IL-15欠損マウスにメラノーマ細胞を移入し、肺転移巣の数を解析する。転移巣が増加している場合には、肺におけるiNKT細胞とNK細胞の数とIFN-g産生能を比較する。以上の実験から、CD244陽性iNKT細胞が抗腫瘍免疫を亢進させるかを検証する。
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