研究課題/領域番号 |
20H03504
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 政克 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00311605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 解糖系 / グルタミン / Pgam1 / T細胞 |
研究実績の概要 |
解糖系酵素の一つであるPgam1のT細胞特異的欠損マウスを用いて、抗原刺激によるT細胞における解糖系活性化が、T細胞抗原受容体(TCR)やIL-2受容体を介したシグナル伝達が持続するために必要であることを示した。また、T細胞抗原認識に伴う解糖系の活性亢進は、グルタミン代謝の活性化に必要であり、グルタミンはmTORの持続的活性を介して解糖系の活性化を維持していることが分かった。今回得られた結果により、解糖系とグルタミン代謝はフィードフォワードループを形成することでTCRやサイトカイン受容体を介したシグナルを遷延させ、T細胞の活性化を維持している可能性が示唆された。また、in vivoの解析から、解糖系の活性化は抗原特異的CD8T細胞の増殖、T細胞依存的抗体産生、特にIgG1、 IgG2b、IgEの産生に必要であることがわかった。一方で、血中IgA量は、Pgam1の欠損では減少せず、逆に増加した。また、T細胞特異的Pgam1欠損マウスでは、卵白アルブミン誘発アレルギー性気道炎症、実験的アレルギー性脳脊髄炎が発症しないことが分かった。以上の結果から、抗原認識に伴うT細胞における解糖能の上昇は、正常なT細胞依存的免疫応答の誘導に必要であるとともに、T細胞解糖系酵素が免疫抑制による疾患治療の標的になることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究成果により、グルタミンが活性化T細胞における解糖能、シグナル伝達の維持に必要であることが明らかにすることができ、研究は順調に進んでいる。また、活性化T細胞におけるグルタミン(代謝)がオートファジーの調節を介してT細胞老化を制御している可能性を新たに見出している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、グルタミンによる解糖系、TCRおよびサイトカインシグナルの維持のメカニズムについて、グルタミン代謝酵素であるグルタミナーゼ1(Gls1)のT細胞特異的欠損マウスを用いてin vitro、in vivoの両面から明らかにする予定である。また、新たに見出したグルタミン(代謝)によるT細胞オートファジー制御の分子機構について解析を進める予定である。
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