研究課題
本課題では、RB1の様々な代謝制御能の実態を明らかにすることによってがん特異的な代謝を標的とする新規治療法の開発を目指している。RB1の正の標的として見いだしたPGAM1,2は解糖系酵素のなかでは例外的にHIFやMycの制御を受けない。本年度の研究によりRB1-PGAM系を介する解糖系の制御が細胞分化のエピジェネティック制御に結びつくことが明らかになってきた。がんにおける解糖系の役割を解明するために、大阪大学との共同研究により、代謝シミュレーションを用い、Warburg効果の真の意味の理解にも挑戦している。細胞による熱発生の制御がWarburg効果の新の意義であると考え得る根拠となるデータが揃ってきた。RB1によるAMPK活性の制御が解糖系と関係し、細胞によるサイトカイン制御に繋がることが判明した。予防医学的な取り組みとして、脂肪酸シグナルを介した乳がんの発がん・進展機構の解明も行った。オレイン酸がその受容体であるGPR40を介して乳がん発症に繋がることを解明した。RB1とELOVL6の関係を解明し、がん化シグナルによる脂質代謝制御機構解明の端緒を開いた。ELOVL6阻害がHER2陰性乳がんに対し強い増殖抑制効果を示すこと、その機構にセラミドが関与する事、ELOVL6阻害へのAKTシグナルを介する内在的耐性機構も判明し、ELOVL6阻害剤開発のためのPOC取得のスピードを上げた。RB1によるコレステロール代謝制御の臨床的意義も探索し、この代謝経路の活性化ががん細胞の未分化な振る舞いに繋がることを解明した。
2: おおむね順調に進展している
RB1-PGAM系の探索は論文として発表する準備段階に入った。長い時間をかけたが、RB1による未分化性制御の極めて新しい分子機序を指し示すものとなるはずである。Warburg効果の真の意味の理解も大阪大学との共著論文投稿が間近である。RB1によるAMPK活性の制御に解糖系が介在することが判明した。RB1-ELOVL6基軸の探索は、HER2陰性乳がんのなかでもとりわけ予後不良なトリプルネガティブ乳がんにおいて進展し、in vivoレベルにおいてELOVL6阻害が腫瘍の細胞死を誘導する発見があった。また内在性・獲得性の耐性予測でも大きな進展があった。
RB1, PGAMそれぞれノックアウトした細胞、RB1をノックアウトしてPGAMを強制発現した細胞の13Cフラックス解析およびメタボローム解析を行い、分化や未分化性の制御に関わる代謝経路やヒストンアセチル化を解析する。RB1がPGAMの転写を正に制御する機構を探索する。胃がん細胞においてPGAM1をノックダウンすることによって生じるスフェア形成の分子・代謝機構を探索、がん幹細胞の代謝の解明を目指す。スフェア細胞のシングルセル解析を行い、胃がん細胞の未分化性を裏付けする遺伝子群を網羅的に探索、RB1-PGAM基軸の全貌を解明する。ELOVL6の創薬標的としてのproof of concept 取得を引き続き目指す。RB1不活性化によるAMPKの活性制御につながる経路、すなわちCaシグナル、NAD+/NADH、AMP/ATP比等の測定を行う。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 5件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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