悪性リンパ腫のなかには、B細胞のシグナル伝達分子MYD88とCD79Bの両者にアミノ酸置換変異をもつものが多く存在する。新規作製したCD79B変異マウスを用い、MYD88-L265P変異とCD79B-Y196H変異がどのように協調的に働き、B細胞の悪性化を引き起こすのかを解析した。 野生型およびCD79B変異をもつマウス活性化B細胞に、レトロウィルスを用い野生型MYD88、MYD88-L265P変異を発現させ、抗原刺激ありなしの条件の下でGFP陽性細胞からRNAを単離した。独立した2回の実験からサンプルを作製し、RNAシークエンスによる遺伝子発現解析を行った。MYD88-L265P変異の遺伝子導入によるNFκB転写因子の活性化を示す遺伝子群や抗原受容体刺激後の発現上昇が報告されている遺伝子群の発現変化が観察された。遺伝子発現の変化は、抗原受容体刺激とMYD88-L265P変異の遺伝子導入によって大きく変化しており、CD79B-Y196H変異による影響は少なかった。CD79BとMYD88の両変異を発現するB細胞において抗原受容体刺激後に発現変化が認められる遺伝子を同定した。この遺伝子群の中から、B細胞リンパ腫細胞株のデータベースなどを利用し、リンパ腫の増殖・生存に重要だと想定される候補遺伝子の絞り込みを行った。これらの遺伝子の機能解析を行うための遺伝子発現ベクター、およびCRISPR-CAS9によるゲノム編集ベクターを作製し、細胞株をもちいて候補遺伝子の強制発現と機能欠損による影響を調べるための条件検討を行った。
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