研究課題
これまでに研究代表者は紡錘体形成チェックポントの最上流因子であるMonopolar Spindle Kinase 1 (MPS1)に対する阻害剤が、効率的に細胞質内二本鎖DNA(dsDNA)認識経路および下流の抗腫瘍免疫経路を活性化し、生体内において免疫細胞依存的に抗腫瘍効果を示すことを明らかにした。さらに本年度は、MPS1阻害剤投与による微小核形成に伴ってdsDNA認識経路のみならず細胞質内二本鎖RNA(dsRNA)認識経路も同時に活性化されることを明らかにしたが、その分子機構は不明である。本年度は、MAVSを中心としたdsRNA認識経路が、MPS1阻害剤により活性化する機序の探索を行った。まず始めに、MPS1阻害剤投与により産生される微量な内因性のdsRNAを安定的に定量解析するために、dsRNA特異的な抗体(clone rJ2)を用いて、細胞内フローサイトメトリーにより細胞内dsRNAを定量するための実験プロトコルを決定した。さらにdsRNA認識経路で中心的な役割を担うMAVSを欠損させた細胞を作成し、MPS1阻害剤投与における遺伝子発現変化をMAVS野生型細胞と比較することで、MPS1阻害剤投与に伴うdsRNA認識経路依存的な遺伝子発現変化をRNAシークエンスにより解析した。その結果、MPS1阻害剤はSTING経路のみならず、dsRNA認識経路を介しても1型インターフェロン経路などの抗腫瘍免疫経路に関連するシグナル経路を制御することを明らかにした。また、これまでに研究代表者らが開発してきたがん細胞-免疫細胞の相互作用を解析可能な3次元共培養系を用いて、MPS1阻害剤処理に伴い免疫細胞の腫瘍領域への遊走が亢進すること、およびそれらの現象はdsDNAおよびdsRNA認識経路の活性化に依存することを明らかにした。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Cancer Cell
巻: 40(10) ページ: 1128-1144
10.1016/j.ccell.2022.08.015