(1)免疫チェックポイント阻害薬の治療効果(奏効率)とMeflin陽性がん関連線維芽細胞(CAF)との関連を、肺がん以外の悪性腫瘍として腎細胞がん及び尿路上皮がんを対象に行った。その結果、非小細胞肺がんの結果と同様に、腎細胞がん及び尿路上皮がんについても、Meflin発現は免疫チェックポイント阻害薬の良好な奏効率及び予後と相関していた。 (2)免疫チェックポイント阻害薬の治療効果をMeflin陽性CAFが分子レベルでどのように制御するかを明らかにする目的で、マウスおよびヒト病理検体を用いた実験を行った。Meflin系譜細胞特異的に補体C3をノックアウトしたマウスより単離した線維芽細胞を培養し、その培養上清を用いて腹腔由来CD11b陽性細胞のトランズウェルアッセイを実施したところ、Meflin系譜細胞特異的補体C3ノックアウトマウス由来線維芽細胞の培養上清は対照マウス由来線維芽細胞の培養上清を用いた場合と比較して、多くの細胞が下層へ浸潤することを確認した。さらに、補体欠損血清含有培養液およびヒト補体C3由来iC3bを用いて、CD11b陽性細胞株であるTHP-1細胞のトランズウェルアッセイを行い、iC3bがTHP-1細胞上のCD11bを介して下層への浸潤を抑制することを確認した。また、野生型マウスと比して腫瘍内へのCD11b陽性細胞の浸潤が多いMeflinノックアウトマウスにMC-38細胞株を移植し、抗PD-1抗体およびCD11b陽性細胞を排除する薬剤で治療したところ、抗PD-1抗体単独では抗腫瘍効果が期待できないMeflinノックアウトマウスにおいても強力な治療効果を確認した。以上から、Meflin陽性CAFが補体C3を分泌することで、腫瘍内からCD11b陽性細胞を排除し、免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強することが示唆された。
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