研究課題
腫瘍間質中のCancer associated fibroblasts (CAFs)は、様々な液性因子を分泌し癌進展に関わっている。一方、CAFsには均一の細胞集団ではなく、多様性の存在が明らかになってきている。本研究の目的は、びまん性・腸型胃癌組織から樹立したCAFsバイオバンクを用いたシングルセル解析(RNAシーケンシング・プロテオミクス)により、組織型別の胃癌間質分子サブタイピングをおこない、癌進展や薬剤抵抗性獲得を制御する新規治療ターゲットを創出することである。現在、20症例の胃がん組織からシングルセルRNAシーケンシングに向けたライブラリ作製をおこない、順次シーケンシングを開始している状況である。また、胃癌切除検体を用いて、CAFsのマーカーであるαSMAの免疫染色・定量化を行い、予後との関連性を評価したところ、腫瘍間質にCAFsが多い症例は有意に予後不良であった。サブグループ解析において、抗がん剤治療を行ったStageIV症例においても、CAFsが多い症例は特に予後不良であった。予後解析の結果を受けて、抗がん剤抵抗性を促進するCAFs由来因子として、細胞外小胞に着目した。胃癌CAFsから抽出した細胞外小胞を用いて網羅的なプロテオミクスを実施し、CAFs由来細胞外小胞に特異的なタンパク質としてアネキシンA6を同定し、アネキシンA6によるインテグリンB1の細胞膜上安定化を介した抗がん剤耐性メカニズムを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
胃癌症例のサンプル集積は順調に進んでおり、シーケンシングに向けた準備は問題なく遂行できている。また、胃癌CAFsの細胞外小胞に関する研究成果は論文化することが出来た。
今後は、胃癌組織からのシングルセルRNAシーケンシングデータの解析を開始し、組織型別にCAFsのヘテロジェネイティに着目した検討を進める予定である。また、CAFsの細胞老化の観点からも検討をおこなっており、老化したCAFsがSASPと呼ばれる分泌形質を呈するメカニズムについて、エピゲノム変化に注目し更なる解析をおこなう。また、SASPを呈するCAFsが胃癌進展および転移形成に働く分子機構については、マウスモデルを用いて検討を予定している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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