研究課題
【背景】本研究では、エフェクターサイトカインを分泌し、CAR-T細胞を活性化させる腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd)を開発することでCAR-T細胞療法の効果を強化するOAdを開発し、より効果的な抗腫瘍作用を発揮する複合的細胞遺伝子治療法を開発を目指した。【成果】腫瘍溶解性アデノウイルスを作製する際、要となるバックボーンプラスミドの入手が、新型コロナウイルス感染症の影響で大幅に遅れ、また入手した後も相同組み換えが計画通り進まず、予定していたOAdの作成は叶わなかった。そのため、当初の計画を変更し、腫瘍溶解性アデノウイルスをプロモータにより制御し、直接的に抗腫瘍効果を示す方針とした。小児難治性腫瘍の一つであるラブドイド(RT)細胞において高発現している遺伝子Xに注目した。RT細胞株における遺伝子XのmRNAの発現量は、正常組織と比較して4~400倍高かったため、遺伝子Xのプロモーターによって制御されるOAd(X-OAd)を作製した。各細胞のプロモーター活性についてはルシフェラーゼアッセイで再現性を確認した。In vitroで、X-OAdは遺伝子Xのプロモーター活性の高いAN細胞やG401細胞を複製・殺傷したが、プロモーター活性の低いYM細胞では複製しなかった。In vivoでは、X-OAdの投与はPBSの投与よりも有意に腫瘍の成長を抑制した。また、腫瘍の病理を評価したところ、ウイルスは腫瘍内に拡散し壊死を誘導しており、直接的な殺細胞効果があることが示唆された。結論として、X-OAdは、遺伝子X高発現のRTに対して有効であると考えられる。現在in vivoの実験について再現性を検証している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。