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2020 年度 実績報告書

BRAF変異腫瘍の臓器多様性の解明とtumor agonistic治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 20H03542
研究機関愛知県がんセンター(研究所)

研究代表者

衣斐 寛倫  愛知県がんセンター(研究所), がん標的治療TR分野, 分野長 (00645145)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードBRAF変異 / 個別化治療 / tumor agonistic therapy
研究実績の概要

BRAF変異は、がんの8%程度に認めるドライバー遺伝子異常である。その多くはV600E変異であるが、遺伝子パネル検査の発展に伴いV600以外の変異も同定されている。変異BRAFは、キナーゼ活性に従い3つのサブタイプ(Class I~Class III)に分類され、申請者はその分類が治療に生かせることを示してきたが、サブタイプ分類されていない変異も多数存在する。本年度は、TCGAやMSK-IMPACTなどの大規模遺伝子解析研究において同定されているBRAF変異のうち、これまでに機能が明らかとなっていない約100種類について機能の同定を行った。mouse embryonic fibroblast(MEF)に変異BRAFを発現させ、下流シグナルの活性化能を検討したところ、これまでに明らかとなっていなかった機能性変異約10個を新たに同定した。これらの機能性変異について、RASを構成するKRAS, NRAS, HRASをすべて欠損したRAS less細胞を用いRAS依存性を現在評価している。
また、BRAF non-V600変異大腸がん症例より全エクソームシーケンス解析とRNAシークエンス解析を行い、Gene Set Enrichment Analysisなどの手法を用いClass IIおよびClass IIIに分類されれるBRAF non-V600変異大腸がんに特異的なシグナルパスウエイについて同定を進めている。
Class I変異大腸がんに対しては、研究者らが提唱した抗EGFR抗体+BRAF阻害薬が保険償還されている。Class I変異大腸がんにおけるMAPKシグナル依存性をシグナル解析をもとに評価し、新たな標的分子の候補を同定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

BRAF変異の機能性分類については、①Fibroblastに導入した場合の下流シグナル活性化の有無、②RAS less細胞を用いた受容体およびRAS依存性の有無、の2点について別々の系を用いた評価が必要である。両者について、2017年Natureに報告された手法を報告したグループと連携しながら開始したが、安定した結果が当初得られずアッセイ系の確立に時間を要した。年度の後半になり①については系の確立を認め、機能性変異の同定が進んでいる。②の受容体およびRAS依存性の有無を評価する手法については、独自のアッセイ系を新たに構築し、既存の方法と比較検討しながら進めており、安定した結果が得られつつある。
BRAF non-V600変異腫瘍の発現およびパスウエイ解析については、必要十分な検体が得られたことから、シークエンス作業が順調に進んでいる。パスウエイ解析については、別研究で確立した手法が使用可能なことから、研究計画通り順調に進んでいると判断している。

今後の研究の推進方策

機能不明バリアントについては、昨年度までに約100種類の機能性の有無について評価が終了している。本年度は残りの機能不明バリアントの機能性の有無について評価を終了する。その上で、機能を有するバリアントについて、クラス分類をRAS less細胞株を用いて評価を行う。クラス分類については、2021年度中に終了を見込んでおり、これまで既に文献上Class分類が報告されたものと、本課題により新たに明らかになったものを使用し、BRAF変異機能を予測するモデルの構築に着手する。
BRAF non-V600変異がんのがん種やクラス分類による機能の違いについては、まず昨年度得られたBRAF non-V600変異大腸がんの変異・発現プロファイルを用い、各クラス分類に特徴的なシグナルパスウエイの同定を行う。大腸がんの解析で得られたデータを他のがん種に拡張するため、TCGAなどのデータベースより変異・発現プロファイルを入手し、BRAF non-V600腫瘍の臓器特異性について探索する。
BRAF V600変異大腸がん、肺がんに対しては、昨年度得られた、感受性や耐性に関わる候補分子について、機能評価を進める。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] MAPKシグナル経路を標的とする分子標的治療2021

    • 著者名/発表者名
      衣斐寛倫
    • 雑誌名

      がん分子標的治療 (Journal of Molecular Targeted Therapy for Cancer)

      巻: 18 ページ: 193-198

  • [雑誌論文] BIG BANG study (EPOC1703): multicentre, proof-of-concept, phase II study evaluating the efficacy and safety of combination therapy with binimetinib, encorafenib and cetuximab in patients with BRAF non-V600E mutated metastatic colorectal cancer2020

    • 著者名/発表者名
      Kotani D, Bando H, Taniguchi H, Masuishi T, Komatsu Y, Yamaguchi K, Nakajima T, Satoh T, Nishina T, Esaki T, Nomura S, Takahashi K, Iida S, Matsuda S, Motonaga S, Fuse N, Sato A, Fujii S, Ohtsu A, Ebi H, Yoshino T.
    • 雑誌名

      ESMO open

      巻: 1 ページ: e000624

    • DOI

      10.1136/esmoopen-2019-000624

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Epithelial-to-Mesenchymal Transition is a Cause of Both Intrinsic and Acquired Resistance to KRAS G12C Inhibitor in KRAS G12C-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer2020

    • 著者名/発表者名
      Adachi Y, Ito K, Hayashi Y, Kimura R, Tan TZ, Yamaguchi R, Ebi H.
    • 雑誌名

      Clinical Cancer Research

      巻: 26 ページ: 5962-5973

    • DOI

      10.1158/1078-0432.CCR-20-2077

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Japanese Society of Medical Oncology Clinical Guidelines: Molecular Testing for Colorectal Cancer Treatment, 4th edition2020

    • 著者名/発表者名
      Ebi H, Bando H, Taniguchi H, Sunakawa Y, Okugawa Y, Hatanaka Y, Hosoda W, Kumamoto K, Nakatani K, Yamazaki K.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 111 ページ: 3962-3969

    • DOI

      10.1111/cas.14567

    • 査読あり
  • [学会発表] RAS 変異がんに対する分子標的治療2020

    • 著者名/発表者名
      衣斐寛倫
    • 学会等名
      日本癌学会学術総会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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