研究課題
認知症をはじめとして認知機能障害では過去の記憶を思い出せなくなる想起障害が生じる。しかし、想起障害を回復させる治療法はいまだ確立していない。私たちはヒスタミンH3受容体拮抗薬・逆作動薬によるヒスタミン神経系の活性化によって、忘れた記憶の想起が回復することをマウスやヒトで明らかにしてきた。しかし、想起回復に関連する神経活動の変化は不明である。そこで本研究ではヒスタミンH3受容体拮抗薬による神経活動の変化をin vivoで解明するために研究を進めた。自由行動下のマウスの嗅周皮質の神経活動を測定するため、嗅周皮質の神経細胞に蛍光カルシウムセンサータンパク質を導入した。そしてGRINレンズを嗅周皮質の上部に埋め込んだ。この操作により、嗅周皮質の神経細胞の活動に伴う蛍光強度変化を可視化することができた。頭部搭載型の小型顕微鏡を用いたin vivoカルシウムイメージングにより、自由行動中の多数の神経細胞の活動を測定した。ヒスタミンH3受容体拮抗薬ピトリサントの投与前後で嗅周皮質神経活動の変化を解析した。ピトリサント投与によって一部の神経細胞の活動が大きく上昇した一方で、一部の細胞の活動は大きく低下した。また活動が大きく上昇した細胞間では同期活動が増加していた。さらに機械学習を用いた解析により、ピトリサントによって細胞集団の活動が変化しており、これら変化は活動が上昇した細胞と低下した細胞によるものであった。以上より、ヒスタミン神経系の活性化による認知機能の改善に、こうした一部の神経細胞集団の活動変化が関与している可能性が考えられる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 7015
10.1038/s41598-022-11032-y