研究課題
基盤研究(B)
想起障害は認知症の主要な症状の一つだが、想起障害を回復させる治療法は確立していない。私たちはヒスタミンH3受容体拮抗薬によって、忘れた記憶の想起が回復することを明らかにしてきたが、メカニズムの解明は不十分だった。そこで本研究では、ヒスタミンH3受容体拮抗薬が大脳皮質の神経活動をどのように調節するかを調べた。その結果、ヒスタミンH3受容体拮抗薬ピトリサント投与によって嗅周皮質の一部の神経細胞の活動が大きく上昇し、これら細胞間では同期活動が増加していることを明らかにした。
神経科学
記憶の想起障害は認知症を始めとした認知機能障害において重要な症状の1つだが、障害を回復させる治療法は確立していない。治療法の確立には、想起障害が回復するときの神経メカニズムを解明し、そのメカニズムを効率よく活性化・促進することが望ましい。本研究によって、想起障害の回復作用を有するヒスタミンH3受容体拮抗薬投与によって、嗅周皮質の神経活動の変化が明らかになった。今後は、こうした変化を効率よく誘導する方法を見出すことで、より良い治療法の開発に貢献できると考えられる。