研究課題/領域番号 |
20H03553
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
野澤 孝之 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (60370110)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 創造的コミュニケーション / マルチモーダルセンシング / ハイパースキャニング / メタスタビリティ / 脳活動信号処理 |
研究実績の概要 |
脳,身体,生理活動の個人間の同調は,コミュニケーションの「質」を反映する特徴量として,そのメカニズムと応用可能性に関心が寄せられている.しかしこれらの同調現象はこれまでモダリティ毎に個別に研究され,相互の関係は明らかにされていない.また多くの研究で同調現象は時間的に定常的な視点で扱われてきた.これに対して本研究は,動的な創造的コミュニケーションを対象に,参加者の脳活動,身体活動,生理信号を同時に計測し,マルチモーダルな同調ダイナミクス間の関係と集団的創造過程への貢献を明らかにすることを狙う. 計画2年目の本年度は,マルチモーダルなセンシング間での高精度での時間同期を実現する手法の導入・拡張と,マルチモーダル同調ダイナミクスを評価するための分析手法の開発を行った.また,新型コロナウイルス感染症の影響のもとでも可能な遠隔コミュニケーション/インタラクション課題を設計し,実験を行った.既得の対面創造的コミュニケーション実験や集団音楽インタラクションのマルチモーダルデータに対しても,新たな切り口で分析を進めた. コミュニケーション活動の同調をリアルタイムフィードバックすることで集団創造性を促進する効果についての論文,学習状況における脳活動同調が学習へのエンゲージメント共有のダイナミクスを反映することを示した論文,個人間の同調を特徴量として取り込むことでコミュニケーション時の個人の感情状態認識の精度を改善できることを示した論文が,国際学術雑誌に掲載された.また,マルチモーダル同調評価によるインタラクションの評価およびそのフィードバックによるインタラクション支援等についての学会発表など,その他の成果発表も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により,人との接触が大幅に制限されたため,対面での創造的コミュニケーションの実施が著しく困難となった.また,予定していたイギリスの協力研究者の訪問/招聘も延期となった.そのため実施内容を柔軟に調整し,既得の実験データに対し新たな切り口で分析を進めるとともに,接触を抑えられる遠隔コミュニケーション/インタラクションの実験を設計・実施した.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の動向の動向を見極めながら,状況に応じた実施項目の柔軟な調整を行う.とくに,遠隔で可能な実験設定への拡張を引き続き進める.対面実験の実施にあたっては,参加者の健康を第一に安全の確保に充分注意する.また,本研究課題の目的に流用できるパブリックデータの利用検討も進める.海外への渡航や海外協力研究者の招聘については,今後の動向を見ながら安全確保のもと進めていく.
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