研究課題/領域番号 |
20H03558
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
角家 健 北海道大学, 医学研究院, 特任准教授 (30374276)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経前駆細胞移植 / 脊髄損傷 / 形態形成因子 |
研究実績の概要 |
神経前駆細胞移植によって、脊髄損傷部を新しい神経組織で充たすことが可能になったが、正常組織と異なり、移植組織内の神経細胞の位置は全くの無秩序である。神経前駆細胞移植による機能再生効果を向上させるためには、秩序だった神経細胞の配置が重要であると予想されるが、未だ、移植神経細胞の位置を制御する方法は開発されていない。発生期では、神経前駆細胞がモルフォゲンの濃度勾配を位置情報として利用することで、脊髄組織の構成にパターンを形成する。そこで、本研究の目的は、脊髄損傷部に移植された神経前駆細胞はモルフォゲンの濃度勾配を位置情報として利用できるという仮説を検討することである。これまでに、マウスの5種類のモルフォゲン(BMP4、Wnt1、Sonic Hedge Hog、Netrin1、Draxin)のクローニングを完了し、第3世代のレンチウイルスによる、線維芽細胞への遺伝子導入システムを確立、各モルフォゲンとコントロールの計6種類のレンチウイルスを作成し、FACSを使用して、5種類のモルフォゲンを分泌する同系マウス由来の線維芽細胞の作成を完了した。また、これらの線維芽細胞の脊髄への移植方法と、胚性脊髄由来の神経前駆細胞を損傷部に移植し、新規神経組織の作成方法も確立した。最後に、免疫染色によって、移植神経細胞のパターン形成評価方法も確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、脊髄損傷部に移植された神経前駆細胞はモルフォゲンの濃度勾配を位置情報として利用できるという仮説を検討することである。具体的には、レンチウイルスを使用して、5種類のモルフォゲンを分泌する同系マウス由来の線維芽細胞を作成し、脊髄の背側と腹側に移植し、引き続いて、同系マウス頚髄の部分切断モデルを作成し、GFP陽性マウス胚性脊髄由来の神経前駆細胞を、損傷部に移植後、2週で灌流固定を行い、免疫染色によって移植神経細胞がパターン形成しているかを確認し、組織のELISAで濃度勾配の実現を確認する。これまでに、FACSを使用して、各モルフォゲン(BMP4、Wnt1、Sonic Hedge Hog、Netrin1、Draxin)とGFPを分泌、発現する同系マウス由来の線維芽細胞を選別、増殖させ、移植に十分な細胞量を確保し、線維芽細胞の各モルフォゲンの分泌を確定し、線維芽細胞の移植方法を確立した、また、マウス脊髄損傷部にマウス神経前駆細胞を移植することで、脊髄損傷部に新規の神経組織が作成されることも確立した。さらに、新規神経組織内の各種神経細胞の同定方法を、E12マウス胚性脊髄を陽性対照として確立した。
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今後の研究の推進方策 |
マウス脊髄損傷部へ神経前駆細胞を移植し、移植部の頭側には、蓋板由来モルフォゲン(BMP4、Wnt1、Draxin)分泌線維芽細胞、尾側には底板由来モルフォゲン(Sonic Hedge Hog、Netrin1)分泌線維芽細胞をそれぞれ移植する。移植後1週間の脊髄組織のELISAを実施し、移植神経組織内にモルフォゲンの濃度勾配ができてることを確認する。続いて、同様の移植条件での、移植後2週での脊髄切片に免疫染色を実施し、移植神経細胞の種類と位置を検討し、モルフォゲンの濃度勾配によって、移植神経細胞の位置に変化が生じているかを明らかにする。引き続いて、蓋板由来モルフォゲン分泌線維芽細胞のみ、底板由来モルフォゲン分泌線維芽細胞のみの群、それぞれから1種類のモルフォゲン分泌細胞を抜いた群も検討し、移植神経細胞の位置に影響を及ぼすモルフォゲンを確定する。最後に、6種類の線維芽細胞を、マウス脊髄損傷部に移植後、皮質脊髄路、感覚神経路の軸索を標識し、宿主から移植組織内への軸索再生に違いがあるか明らかにする。
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