昨年度までの研究によりヒトGICを特異的に傷害するmiR依存ゲノム編集AAVの構築に成功したことから、今年度は尾静脈投与したAAVが脳腫瘍に感染するためのキャプシドの決定を試みた。これまでに、野生型マウスの血液脳関門(BBB)を透過する複数のキャプシド(PHP.eB、CAP-B10、9P33等)が報告されているが、免疫不全マウスに利用できるキャプシドは報告されていない。加えて、これらBBB透過性キャプシドがヒトGICに感染能を有するかも検討されていない。そこで、現在までに報告されている複数のBBB透過性キャプシドcDNAを作製し、免疫不全マウスのBBBに対する透過能とヒトGICへの感染能を検討した。その結果、免疫不全マウスBBB透過能を有するキャプシド群を同定することができたが、これらキャプシドのヒトGICに対する感染効率は極めて低かった。そこで、免疫不全マウスBBB透過能を有するキャプシドとヒトGIC感染能を有するキャプシドを併せ持つ複数のデュアルキャプシドAAVを作製し、ヒトGICを脳移植した免疫不全マウスに尾静脈投与することにより、最も効率よくヒトGIC脳腫瘍に感染するデュアルキャプシドを決定した。次に、miR依存ゲノム編集システムを組み込んだデュアルキャプシドAAVをヒトGIC脳腫瘍モデルマウスに尾静脈投与したところ、本AAVが抗腫瘍効果を発揮し、本AAVを投与した担癌マウスの生存期間が優位に延長することを確認した。これらの結果から、本研究課題の目的である「miR依存ゲノム編集システムを搭載した新規抗GBMウイルスの創出」を達成した。
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