研究課題
多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)をはじめとする免疫性神経疾患では、病態の核として、T細胞上に発現する共抑制性受容体の機能不全が知られ、慢性的な持続炎症と病態進行の原因となっている可能性がある。MS病態においてCD8陽性(CD8+)T細胞はその神経細胞傷害性機能が想定されてきたが、最近になり炎症病態抑制性の機能が報告され注目されている。申請者は予備実験としてMS患者末梢血を用いて、PD-1陽性(PD-1+)CD8+T細胞の病勢や治療反応性との関連を分析し、急性期髄液においてはこの細胞亜分画がステロイドパルス療法への反応性の良い群で増加し、寛解期末梢血においてはインターフェロンβ治療によって分化誘導され再発抑制と関連していることを発見した。本研究では申請者が取り組んできた免疫学的解析手法を用いて、疾患修飾治療薬によって良好な経過をとる患者で認められるPD-1を含む共抑制性受容体発現の遺伝子制御機構と進行性病態での役割の解明を目指す。具体的にはMS患者検体を用いて、インターフェロンβ治療によって発現が回復する共抑制性受容体を含む遺伝子群を網羅的遺伝子発現解析によって抽出する。その上で、他の抑制性遺伝子群とも共通の遺伝子プログラムを構築し、その制御機構の鍵となる転写因子を同定する。昨年度は患者CD8+T細胞においてPD-1と共発現する遺伝子について網羅的遺伝子発現解析を行い、複数のT細胞機能低下状態に共通する抑制性遺伝子群を含む遺伝子プログラムを同定した。本年度はこの遺伝子プログラムを直接制御する転写因子をin silico解析で優先順位をつけて絞り込み、その転写因子による遺伝子発現制御によってT細胞の抑制性遺伝子群が獲得されることを同定した。
2: おおむね順調に進展している
本研究における具体的な実験計画として①インターフェロンβ治療によって発現が回復する共抑制性受容体を含む遺伝子群を網羅的遺伝子発現解析によって抽出する。②他の抑制性遺伝子群とも共通の遺伝子プログラムを構築し、その制御機構の鍵となる転写因子を同定する。③さらに転写因子制御によってT細胞の抑制性遺伝子群がどのように変動するか、また抑制性機能を司るかをin vitro細胞培養系や動物モデルを用いて検証する。というステップを考えている。本年度までに①及び②が実施され、③に取り掛かっているため順調に進展しているとした。
来年度移行、引き続き研究を進め、上述の③さらに転写因子制御によってT細胞の抑制性遺伝子群がどのように変動するか、また抑制性機能を司るかをin vitro細胞培養系や動物モデルを用いて検証する。というステップを進める。さらに、進行性経過を呈する患者検体のシングルセルRNAシークエンス解析を行い、この遺伝子プログラムが破綻した細胞亜分画の進行性病態促進機構についての解析も検討する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
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