研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(自閉症)はコミュニケーション障害や行動の限局性を特徴とする発達障害であり、1%を越える高い有病率から近年特に注目を集める精神疾患の1つである。CHD8は自閉症患者で最も変異率の高い遺伝子の一つとして注目を集めているが、申請者はマウスに同様の遺伝子変異を導入することで自閉症様の行動異常を再現したモデルマウスの作製に成功し、その自閉症発症メカニズムについて報告した。本研究はCHD8ヘテロ欠損マウスを自閉症モデルマウスとして用いて、シングルセルmRNAseqや細胞種特異的CHD8変異マウスを作製して解析することで、自閉症の発症メカニズムを分子レベル・細胞レベルから理解することを目的としており、さらに明らかになった発症メカニズムを基づいた効果的な治療法の開発を目指す。 2020年度は以前から解析を進めていたオリゴデンドロサイトにおけるCHD8のヘテロ欠損が自閉症の原因となることを明らかにした研究を学術誌に報告し受理された [Kawamura, Katayama et al., Hum. Mol. Genet. 29: 1274-1291 (2020)]。さらにオリゴデンドロサイトでCHD8をヘテロ欠損したマウスの脳構造と機能への影響をfMRIを用いて検証した成果を報告した [Kawamura et al., Mol. Brain 13: 160 (2020)]。また、CHD8は小脳顆粒細胞の分化に重要な役割を担っていることを発見し、CHD8の遺伝子変異はマウスの小脳発生が障害されることで運動機能に影響することを報告した [Kawamura, Katayama et al., Cell reports 35: 108932 (2021)]。
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