研究課題
アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患の克服は、社会的要請の大きな世界的課題である。そのため、発症分子機構を明らかにして、創薬標的を早急に提示する必要がある。これまでの神経細胞中心に着目した研究の限界が世界規模で懸念されており、脳内環境として神経細胞以外のグリア細胞と神経細胞の相互作用の解析が着目されはじめているが、その複雑性から解析は遅れている。2021年度は、前年度に見いだしたアミロイド病理およびタウ病理をそれぞれの病理に特異的に連動するサイトカイン/ケモカインスクリーニングについて、それぞれのノックアウトマウスとの産仔の解析を行った。まず、アミロイド病理に連動するケモカインA(ChemoA)の役割についての解析では、APP knockin x ChemoA-KOマウスでは、その若齢においてもアミロイドβ量の増加が認められた。分子メカニズムは明らかになっていないが、単一のケモカイン欠損によって病理を変動させる興味深い結果が得られた。次年度以降、さらに高齢のマウスの解析を進め、その分子メカニズムの解明に移行していく。次に、タウ病理に連動するケモカインT(ChemoT)については、交配でトラブルが生じたが、年度終わりに無事に産仔が得られはじめた。新年度から、ChemoA同様に若齢解析から開始する。本研究計画では、申請者らが創出したADモデルマウスを用いて、ケモカインレベルの制御がどのように病理形成に影響するのかを明らかにし、これまでにない新たな創薬標的を提示できる可能性が高く、今後の解析が期待される。
2: おおむね順調に進展している
AD患者脳およびADモデルマウス(アミロイド病理を呈する:App knockinマウスおよびタウ病理を呈する:P301S-Tau transgenicマウス)とそれぞれの病理に連動するケモカインの欠損マウスとの交配を進めてきた。App knockin x ChemoA欠損マウスについては、その若齢の解析を行いアミロイドβが増加することを明らかにできた。一方で、P301S-Tau transgenicマウスとChemoT欠損マウスとの交配は、初期の交配トラブルにより産仔を得ることが遅れた。最終的には得られたものの、出だしが遅れたことは否めない。ただ、予定数よりも産仔が得られたことで、今後順調に解析を進めることで遅れを取り戻せる算段もたった。
ADモデルマウスとの交配・維持、加齢を進め、生化学的解析、病理学的解析を行っていく。また、行動解析のプラットフォームを立ち上げて、高次機能解析も視野に展開していく。今後は、加齢による効果の確認・検証が主になってくるため3ヶ月ごとに解析を積み上げていく。一方、病理に連動する特異的ケモカインの産生細胞を明らかにする必要がある。これには、RNAseqやspacial-transcriptomicsの手法が重要となってくる。これについては自分らで解析を行うにはハードルが高いため、新たに共同研究を構築するなど対外的にもアピールして行く必要があると考えている。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
Frontiers in Neuroscience
巻: 16 ページ: 8074743
10.3389/fnins.2022.807473
https://vib.be/labs/van-loo-lab
https://ki.se/en/nvs/per-nilsson-group