研究課題/領域番号 |
20H03564
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
斉藤 貴志 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90360552)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知症 / アミロイド病理 / タウ / ケモカイン / グリア |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患の克服は、社会的要請の大きな世界的課題である。そのため、発症分子機構を明らかにして、創薬標的を早急に提示する必要がある。これまでの神経細胞中心に着目した研究の限界が世界規模で懸念されており、脳内環境として神経細胞以外のグリア細胞と神経細胞の相互作用の解析が着目されはじめているが、その複雑性から解析は遅れている。2022年度は、アミロイド病理およびタウ病理をそれぞれの病理に特異的に連動するサイトカイン/ケモカインスクリーニングについて、それぞれのノックアウトマウスとの産仔の中老齢の解析を行った。まず、アミロイド病理に連動するケモカインA(ChemoA)の役割についての解析では、APP knockin x ChemoA-KOマウスでは、その中老齢においてもアミロイドβ量の増加が認められた。分子メカニズムは明らかになっていないが、単一のケモカイン欠損によって病理を変動させる興味深い結果が得られた。次年度以降、さらに高齢のマウスの解析を進め、その分子メカニズムの解明に移行していく。次に、タウ病理に連動するケモカインT(ChemoT)については、Tau Tg x ChemoT-KOマウスの若齢解析を行った。その結果、ChemoT欠損によりタウのリン酸化の顕著な低下を認めた。次年度以降、中老齢マウスの解析を行い、得られた結果の妥当性を検証していく。本研究計画では、申請者らが創出したADモデルマウスを用いて、ケモカインレベルの制御がどのように病理形成に影響するのかを明らかにし、これまでにない新たな創薬標的を提示できる可能性が高く、今後の解析が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AD患者脳およびADモデルマウス(アミロイド病理を呈する:App knockinマウスおよびタウ病理を呈する:P301S-Tau transgenicマウス)とそれぞれの病理に連動するケモカインの欠損マウスとの解析を進めてきた。App knockin x ChemoA欠損マウスについては、その中老齢の解析を行いアミロイドβが増加することを明らかにできた。一方で、P301S-Tau transgenicマウスとChemoT欠損マウスとの交配産仔の解析から、その若齢であってもタウのリン酸化の顕著な低下を認め、単一ケモカインの欠損による効果の大きさを確認できた。これにより、今後の解析の重要性が高まったと共に、ケモカイン制御による認知症病理の制御に展開できることを確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
ADモデルマウスとの交配・維持、加齢を進め、生化学的解析、病理学的解析、行動解析を行い、病理形成から高次機能との連関解析に展開していく。これまで同様に、加齢による効果の確認・検証が主になってくるため3ヶ月ごとに解析を積み上げていく。一方、病理に連動する特異的ケモカインの産生細胞の同定に着手している。これには、RNAseqやspacial-transcriptomicsの手法が重要となってくるため、新たに共同研究体制を構築しており、新たに予算を獲得するなどして、共同研究を推進していく。
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