研究実績の概要 |
高齢糖尿病患者において老化が糖尿病性腎臓病の進展に寄与するメカニズムを検討するため、高齢マウスを用いて、腎機能、腎臓の組織学的変化について、若年マウスと比較検討した。高齢マウスの腎臓は尿細管周囲の毛細血管の破壊と減少、間質領域の拡大と繊維化を呈していた一方で、糸球体の構造は比較的保たれていた。さらに、高齢マウスにストレプトゾトシン糖尿病を惹起したが、間質の拡大と繊維化は非糖尿病の高齢マウスと比較して有意差は見られなかった。RAN-seqを用いた遺伝子発現のレベルでは、高齢マウス腎臓はCdkn1aやCDkn2aなどの老化マーカーが上昇する傾向を示し、細胞老化をきたしていることがわかった。加えて、尿細管障害の増加が組織学的レベルで観察された。高齢マウスは若年マウスと比較して、脂肪酸代謝に関わる遺伝子群の発現の発現低下が認められ、尿細管における代謝障害を反映していると考えられた。また、若年マウスにストレプトゾトシン糖尿病を惹起したところ強いCdkn1aの上昇を認め、老化腎臓と若年糖尿病性腎臓病の間には少なくともCdkn1aを共通項に持つ老化機構が存在することが明らかとなった。加えて細胞レベルでは、ヒト腎臓線維芽細胞を長期継代培養したところ、CDKN1A, CDKN2Aなどの老化マーカーの上昇、増殖の低下、ヒストンのmodificationを認め、継代老化によるエピジェネティックな変化が腎臓老化の背景にあると考えられた。
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