研究課題/領域番号 |
20H03581
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
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研究分担者 |
李 ヨキン 日本大学, 医学部, 准教授 (30599048)
風間 智彦 日本大学, 医学部, 助教 (80525668)
遠藤 則行 日本大学, 医学部, 助手 (30869475)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脱分化脂肪細胞 / 細胞治療 / 変形性膝関節症 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は変形性膝関節症(OA)治療用の臨床グレード脱分化脂肪細胞(DFAT)の製造法を確立し、各種OAモデル動物に対する移植実験を行い、その有効性や安全性を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の研究を実施した。 ①OA治療用臨床グレードDFAT製造法の確立 昨年度に引き続きOA治療用臨床グレードDFATの試験製造を行った。OA治療用凍結製品として最適な凍結保存用バッグを決定し、80%以上の高い生存率が長期間保持される凍結保存法や最終製品の至適細胞濃度を決定した。中間製品を用いた特性解析を行った結果、天井培養後にDFATを特定するのに最適な細胞表面マーカーの組み合わせを決定するに至った。また製造工程各段階における工程内管理試験や最終製品の規格試験の実施項目及び検査方法を決定した。 ②OA動物モデルを用いたDFATの治療効果 Wisterラットに各種濃度のモノヨード酢酸を関節内に注射し、経時的に両側圧力差痛覚測定装置を用いた疼痛の評価及び軟骨変性の組織学的評価を行った。その結果、モノヨード酢酸の投与量依存的に軟骨変性が再現性良く誘導されることを確認した。そして細胞移植の有効性評価に適したモノヨード酢酸投与量と評価ポイントを決定するに至った。またWisterラット膝前十宇靭帯・内側半月板切除によるOAモデルに対し、蛍光標識した同種DFATを関節内移植し、その局在を経時的に解析した。その結果、移植された細胞は主に滑膜組織に分布することや、酵素処理後フローサイトメーターにて移植細胞数を定量評価できることを確認した。以上の検討により、DFATの治療効果を正確に評価できる再現性の高いOAモデルと評価方法・時期を確定するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「OA治療用臨床グレードDFAT製造法の確立」では、製造方法の作業手順や品質管理試験の実施項目及び検査方法を確定することができたが、試験製造の実施数が少なかったため、当初予定していた最終製品の規格を決定するまでには至らなかった。「ラットOAモデルに対するDFAT移植実験」では、モノヨード酢酸の至適投与量を決定し、DFATの治療効果を評価できる再現性の高いOAモデルを確立するとともに、評価方法・時期を決定するに至った。一方、当初このモデルに対し同種DFATを関節内投与し、その治療効果を評価する実験を開始する予定であったが、安定した実験系の確立に時間がかかったため、実施に至らなかった。以上より予定された研究の多くは着実に実行されたが、一部の実施項目に遅延が生じたため、「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
「① OA治療用臨床グレードDFAT製造法の確立」に関しては、引き続きOA治療用臨床グレードDFAT(凍結製品)の試験製造及び最終製品の特性解析や安定性試験を行い、OA治療用臨床グレードDFATの規格決定を目指す。また臨床試験のモニタリングに利用可能な活性バイオマーカーの同定を試みる。 「② OA動物モデルを用いたDFATの治療効果」に関しては、前年度に確立した膝前十字靭帯切離・内側半月板切除ラットOAモデルに蛍光標識した同種DFATを関節内注射する方法を用いて、経時的にフローサイトメーターやin vivoイメージング装置で移植細胞の局在解析を行う。そして自家DFATと他家DFATの生着性の差異を明らかにし、細胞の至適投与量や投与間隔の設定根拠となるデータを取得する。本実験は当初、自家DFAT調製が容易であることからウサギOAモデルを用いることを予定していたが、ラットでも自家DFATが調製可能となったため、ラットOAモデルで検討を行っていく。また前年度に確立したモノヨード酢酸誘発ラットOAモデルに対して同種DFATを関節内投与し、疼痛改善効果や軟骨変性抑制効果を評価する。さらに免疫不全ヌードラットOAモデルに対して臨床グレードヒトDFATを関節内投与し、軟骨変性の程度や疼痛改善効果を評価する。対照として同一ドナーから調製した脂肪組織由来幹細胞(ASC)やヒアルロン酸の治療効果の相違について比較解析し、DFAT移植の優位性を明らかにしていく予定である。
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