研究実績の概要 |
本年度はC9ORF72ジペプチドが誘導する相分離および細胞毒性におけるスペーサーアミノ酸の役割について検討を行った。Poly(PR)はProのピロリジン環に由来する構造的な剛性のため、酸性分子とのalingmentが悪く、その代わりに多価結合が促進された。一方でpoly(GR)はGlyの持つ柔軟性のため、酸性分子とのalignmentが良好であり、結合エネルギーが高く少数分子と強固に結合し、流動性が低い液滴を形成した。また、Proの持つ多価結合への影響は側鎖の大きさに由来するものではなく、剛性が強く関与することが示唆された。これらについて現在論文投稿中である。また、poly(PR)ペプチドの多価結合が液体・固体界面での液滴の挙動に与える影響について発表した(Chen et al., 2022)。これら一連の研究で得られた液液相分離とALSの関係について、総説を発表した(Kanekura et al., 2022)。 さらにC9ORF72ジペプチドと同様に(XR)nの構造を持つ分子は非膜性オルガネラへ移行しやすいこと、また電荷的に中性となるpoly(DR)は核スペックルへの局在が知られていたが、この局在にはDとRが交互に存在するzwitterion構造を持つことが必要であることを見出し、報告した(Miyagi et al., 2022)。
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