研究課題
精神病発症危険状態(at-risk mental state, ARMS)の患者を主な対象として、磁気共鳴画像(MRI)による大脳皮質下構造の体積変化を検討した。第一の研究(Sasabayashi et al, 2020)では、107人のARMS患者と104人の健常者において、FreeSurferにより皮質下構造(視床、尾状核、被殻、側坐核、淡蒼球、海馬、扁桃体、および側脳室)の体積を測定した。ARMSでは、健常者に比較して、左側の尾状核と両側の側脳室が大きく、右側の側坐核が小さかった。また男性において、ARMSでは左側の淡蒼球が大きかった。ARMSのうち、後に精神病に移行した者としなかった者の間に、有意な差はなかった。第二の研究(Takahashi et al, 2020)では、62人の統合失調症患者、38人のARMS患者、61人の健常者において、Multiple Automatically Generated Templates(MAGeT)による脳分割法を用いて、皮質下構造(視床諸核、尾状核、被殻、側坐核、淡蒼球)の体積を測定した。統合失調症患者では、ARMS患者および健常者に比較して、視床の背内側核と腹外側核が小さく、また腹外側核体積の減少は認知機能の低下と相関していた。これらの結果から、対象や症例数の違いから一致しない部分はあるものの、大脳皮質下の構造変化が精神病性障害のごく早期段階から存在しており、脆弱性の一因となっているとともに、発症・転帰予測に役立てうる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
コロナ禍による影響で、被験者のリクルートや検査の施行に制限が生じたため。
コロナ禍が継続しているため、研究遂行がある程度制限されることは予想されるが、この1年間において、コロナ禍でも安全に施行できる方法を工夫することができたので、それに従って実行していきたい。
すべて 2022 2020
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件)
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