研究課題/領域番号 |
20H03599
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
菊知 充 金沢大学, 医学系, 教授 (00377384)
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研究分担者 |
横山 茂 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (00210633)
吉村 優子 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (70597070)
廣澤 徹 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (80645127)
AN KYUNGMIN 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (80866054)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 脳磁図計 / 多動性障害 / 認知障害 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究では、自閉スペクトラム症(以下ASD)の症状の多様性に着目し、ASD幼児期の脳活動の特徴と、特定の遺伝子多型を考慮しながら、多様性が生じるメカニズムを解明することを目的とした。社会性、言語や運動などの評価と同時に幼児用脳磁図計をもちいて脳活動の特徴を数値化した。まずは運動に注目し、運動に伴う脳の電気的振動をMEGで測定し、Phase Amplitude Coupling という新しい生理学的指標を使用し、反応速度の遅れを考慮することで、自閉スペクトラム症児の診断精度が88.6%であると報告した。また、安静状態の脳内のネットワークをグラフ解析することで、ASDのスモールワールド性が低いことや、それが社会性の低下に関係していることを国際論文に報告した。自閉症スペクトラム児の脳機能ネットワークの変化は、発作性てんかん様波形の存在に依存することを明らかにした。自閉スペクトラム症患者の脳内ネットワークの変化は、発作間のてんかん様波形の存在により、グラフ解析におけるクラスタリング係数が増加し「正常化」される可能性を示し、しかし、その効果が許容範囲を超えると、かえって自閉症の症状を悪化させてしまう可能性が示唆された。睡眠中の体動にも注目し、拡張サンプルエントロピーで測定した体動の不規則性と予測不可能性は、ASD児が定型発達児に比べて、入眠後2時間までと入眠後約6時間の時点で有意に低かった。表現型の構造にも注目し、知的能力に重度な遅れのない,自閉スペクトラム症を持つ児童において,共同注意 というコミュニケーション能力の異常が大きいほど,知能が低くなることを世界で初めて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は新しい生理学的指標を使用し運動に伴う脳の電気的振動を解析し、自閉スペクトラム症児の診断可能性があることを報告できた。また、安静状態の脳内のネットワークをグラフ解析することで、自閉スペクトラム症児の脳の特徴を一部数値化することを試み、さらにてんかん波との関係性について、考察を深めることができた。睡眠中の体動にも注目し、拡張サンプルエントロピーをもちいた解析で、定型発達との違いがあることを示すことができた。さらには、表現型の構造にも注目した結果がでるなど、研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき自閉スペクトラム症の症状の多様性に着目し、社会性、言語や運動などの表現型を評価すると同時に、幼児用脳磁図計をもちいて脳活動の特徴を数値化し、その上で、ASDや言語発達との関連が報告されている遺伝子多型との関連を解析する。それによりASDの多様性を踏まえた病態メカニズムの細分化した理解を進めることに努める。まずは言語にも関わる特定の遺伝子多型に注目して、幼児の表現型について検討していく。さらに、引き続き聴覚刺激によるP1m成分と、ASD児の言語概念能力との関係を明らかにしていく。さらにASD幼児とその母親との間の自然な見つめ合い中の脳活動も測定し、ASD児の自然な環境での母親の表情認知中の脳活動についても詳細に検討していく。
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