研究課題
C9orf72リピート伸長変異は家族性前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)および筋萎縮性側索硬化症の主要な原因遺伝子変異である。C9orf72リピート伸長変異ではイントロン領域におけるGGGGCCリピートの異常伸長が認められ、このリピートはセンス鎖方向、アンチセンス鎖方向の両方向性に転写され、リピート関連開始コドン非依存性翻訳(RAN翻訳)と呼ばれる特殊な翻訳により病原性のジペプチドリピートタンパク質へと翻訳される。我々はこれまでGGGGCCリピートRNA結合タンパク質であるhnRNPA3がリピートRNAの代謝を促進することを見出してきた。APEX2は近位ビオチン化法にしばしば用いられる遺伝子改変酵素の一つで、過酸化水素とビオチンフェノールの存在下において、極近傍に存在する物質をビオチン標識するが、野生型hnRNPA3およびRNA結合ドメインに変異を有するhnRNPA3のカルボキシ末端にアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APEX2)を付加したプラスミドを作成し、hnRNPA3-APEX2を培養細胞にトランスフェクションし、近位ビオチン化法によりhnRNPA3の近隣に位置する物質を網羅的にビオチン化した。そしてビオチン標識されたタンパク質を質量分析法により網羅的に同定した。令和4年度はこれらの因子がhnRNPA3によるGGGGCCリピートRNA代謝に関与している可能性について機能解析を行い、有望な因子を同定した。当該因子をノックダウンするとGGGGCC リピートRNAによるRNA fociが増加し、逆に当該因子を過剰発現するとRNA fociは減少した。C9orf72リピート変異保持者由来の繊維芽細胞で当該因子をノックダウンすると同様にRNA fociが増加した。成果の一部については、日本神経化学会や日本認知症学会、ADPD2023学会で報告した。現在、論文投稿準備中である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件)
The Journal of Biochemistry
巻: 173 ページ: 273~281
10.1093/jb/mvad012
International Psychogeriatrics
巻: - ページ: 1~14
10.1017/S1041610222001132
JMA Journal
巻: 6 ページ: 1-15
10.31662/jmaj.2022-0160
Human Molecular Genetics
巻: 32 ページ: 1673~1682
10.1093/hmg/ddac298
Cell Reports
巻: 39 ページ: 110913~110913
10.1016/j.celrep.2022.110913
Psychiatry and Clinical Neurosciences
巻: 76 ページ: 351~360
10.1111/pcn.13375