研究課題
ヒトを対象とした研究では、2021年度の閾値下のうつ状態を対象とした検討で、左淡蒼球-右淡蒼球の機能的結合の低下がアンヘドニア症状 (Beck Depression Inventory anhedonia subscoreで評価)や報酬反応性(Environmental Reward Observation Scaleで評価)の低下と関連していることが明らかになった。2022年度は、この結果を踏まえて、健常者82名、うつ病患者92名を対象に、左淡蒼球-右淡蒼球の機能的結合とChild Abuse and Trauma Scale(CATS)で評価した幼少期のストレス経験との関連を検討した。その結果、 CATSの罰得点が左淡蒼球-右淡蒼球の機能的結合と有意な負の相関を示し(r=-0.210, p=0.007)、幼少期に罰せられた体験が多いほど成人後の左淡蒼球-右淡蒼球の機能的結合が低下していることが示唆された。動物実験においては、昨年度までに幼少期ストレス(母子分離-Neonatal Isolation : NI)後のうつ病モデル(学習性無力-Learned Helplessness : LH)ラットの腹側淡蒼球において興奮性神経細胞の減少という神経回路の構造異常を見出し、うつ病様の異常行動との相関関係を見出していた。今年度はその結果を踏まえて、当初計画の課題4)に挙げていた不適切な養育によるストレス反応性を回復させると報告されている環境エンリッチメントをNI群に行い、LHの出現率と腹側淡蒼球の興奮性神経細胞数への影響を検討した。NI群において環境エンリッチメントよるLHの出現率は低下したが、その効果と腹側淡蒼球の興奮性神経細胞数は相関しておらず、うつ病発症脆弱性とその改善には異なる機序が存在することが示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 6349 ページ: -
10.1038/s41598-023-33077-3.