研究課題
ライフステージ早期における糖化ストレス曝露[終末糖化産物(Advanced glycation end products, AGEs)及びその前駆体物質の蓄積亢進]が精神疾患発症のリスクとなるという作業仮説に基づき、ゲノム解析および細胞・動物モデルを用いた分析を推進した。加えて、東京ティーンコホート事業にも参画し、精神病発症リスクと関連する幾つかの要因を明らかにし、学術誌へ報告した。当該年度は、1)低筋力が続くことによりAGEsが上昇することを明らかにし、低筋力がAGEs上昇を介して将来の精神病発症リスクのひとつである思考の問題と関連することを明らかにした。精神病症状の持続は、統合失調症の発症リスクとされることから、思春期からの低筋力(握力)やAGEs値のモニタリングは、疾患発症の予防策を構築する上で有用性が高いと考えられた。また、2)毛髪亜鉛濃度と精神病発症リスクとの関連を検討した結果、思考の問題尺度スコアが高い児童では、亜鉛濃度が有意に低いことも明らかにした。AGEs前駆物質除去の律速酵素が亜鉛要求性であること、AGEs蓄積に関わる酸化ストレスを亜鉛が抑制することなどを考慮すると、亜鉛低下はAGEs前駆物質除去機能低下と酸化ストレス増加を介してAGEs蓄積を惹起していることが示唆された。本所見から、精神病発症リスクが高い思春期児童では、すでに体内の亜鉛濃度が低下している可能性も考えられ、子供のメンタルヘルスを考える上で新たなバイオマーカーとして期待ができると考えられた。さらに、3)尿中の分泌小胞エキソソームの解析から包含された6種のmiRNA発現量が精神病様体験の持続を予測することを見出した。今後、6種類のmiRNAの機能を詳細に検討することによって精神病の発症メカニズムの一端が明らかとなり、より適切な支援や予防に役立つ情報を得る可能性が高いと考えられた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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