研究課題
本研究は、粒子線がん治療における正常骨髄の粒子線被ばくの安全性を実証するために、骨髄幹細胞の粒子線障害に対する組織再生維持機構を解明することを目的として実施された。C57BLマウス(7週齢、雄)を拘束バッグに収納し、アクリルボードにテープで固定した。X線は福井大学ライフサイエンス支援センター・生物資源部門のX線照射装置を、炭素線は量研機構の医療用重粒子線加速器(HIMAC)を利用して、0.01 ~ 10.0 Gy単回全身照射した。照射後1、7および14日目にマウスから大腿骨を摘出し、骨髄細胞分画を調製し、MethoCult培地で培養し、形成されたコロニー数を計数することにより骨髄幹細胞の生存率を解析した。(1)照射1日後の骨髄幹細胞の生存率:X線あるいは炭素線照射1日後の骨髄幹細胞の生存率曲線は、0.5 Gyまでに低線量超高感受性を示し、その後指数関数的に生存率が低下した。(2)照射7日後の骨髄幹細胞の生存率:X線あるいは炭素線照射7日後の骨髄幹細胞の生存率曲線は、照射1日後と同様に0.5 Gyまでに低線量超高感受性を示し、その後指数関数的に生存率が低下した。 (3)照射14日後の骨髄幹細胞の生存率:X線あるいは炭素線照射14日後の骨髄幹細胞の生存率曲線は、0.3 Gyまでにわずかな低線量超高感受性を示し、X線あるいは炭素線共に3 Gyまでの生存率は100%となり、5 Gyでの生存率は、それぞれ約80%あるいは約60%、10 Gyでの生存率は、それぞれ約20%あるいは約10%の生存率であった。以上の結果から、照射直後にDNA損傷応答機構が稼働していないこと、および損傷骨髄幹細胞の排除/新生骨髄幹細胞の置換によって骨髄組織の再生が行われていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
2020年度の研究実施計画と研究実績とを照らし合わせると、陽子線照射実験はマシンタイムを確保することができず、実施できなかったが、炭素線照射実験およびX線照射実験は実施することができ、DNA損傷修復動態の解析以外は研究実績を得ることができた。
1.炭素線およびX線照射実験において、骨髄幹細胞のDNA損傷修復動態の解析を実施する。2.炭素線およびX線照射実験において、骨髄幹細胞の細胞周期の動態解析を実施する。3.炭素線およびX線照射実験において、骨髄幹細胞の遺伝子発現の網羅的解析を実施する。4.陽子線照射実験において、骨髄幹細胞の生存率解析およびアポトーシス誘導動態の解析を実施する。5.陽子線照射実験において、骨髄幹細胞のDNA損傷修復動態の解析を実施する。
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