研究実績の概要 |
(1)X線(180 kV, 10 mA, Cu-0.1 mm filter)を5.0 Gy単回全身照射した正常マウス(C57BL/6J Jcl)では、照射直後の骨髄由来造血幹細胞/多能性前駆細胞の生存率は0.200で、照射1時間後に0.054まで低下し、その後若干の回復が認められ、照射24時間後では0.092であった。照射7日後の生存率は0.124で、照射14日後には0.700まで回復した。 (2)陽子線(200 MeV/u, 10 keV/μm)をブラッグピーク手前の平坦部に配置して5.0 Gy単回全身照射した正常マウス(C57BL/6J Jcl)では、照射直後の骨髄由来造血幹細胞/多能性前駆細胞の生存率は0.121で、照射3時間後に0.059まで低下し、その後若干の回復が認められ、照射24時間後では0.118であった。照射7日後の生存率は0.124で、照射14日後には0.431まで回復した。 (3)炭素線(290 MeV/u, 13.3 keV/μm)をブラッグピーク手前の平坦部に配置して5.0 Gy単回全身照射した正常マウス(C57BL/6J Jcl)では、照射直後の骨髄由来造血幹細胞/多能性前駆細胞の生存率は0.030で、照射24時間まで生存率の回復はほとんど認められなかった。照射7日後の生存率でも0.076で、照射14日後でさえ0.220であった。
以上のことから、X線と比較して、粒子線により損傷した骨髄由来造血幹細胞/多能性前駆細胞の回復が遅延することが示され、粒子線がん治療における治療計画作成時において、照射野内に含まれる骨髄組織の被ばくを極力避けるようにすべきであることが示唆された。また、骨髄組織再生能維持機構に関して、損傷した骨髄由来造血幹細胞/多能性前駆細胞においてDNA損傷応答機構は誘導されず、排除されていると考えられ、また照射7日後以降に新規の骨髄由来造血幹細胞/多能性前駆細胞によって骨髄組織の回復が誘導されていることが示唆された。
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