研究課題
予備研究で「腫瘍内低酸素領域に存在するがん細胞が、放射線治療を優位に生き残り、酸素・栄養環境の良い血管近傍に浸潤して、がんの再発を引き起こす」という再発機構を解明してきた。この知見に基づいて個別化医療を実現するには、患者毎の腫瘍内低酸素の量をモニターし、放射線治療効果を予測する系を確立すること、また低酸素がん細胞の放射線抵抗性に関わる遺伝子を阻害する手法を確立することが肝要である。本研究で我々は、「低酸素がん細胞が発現・分泌し、自身の放射線抵抗性をオートクリン的に誘導するHISP2に着目し、以下の研究を展開した。がんが低酸素環境下でHISP2を発現・分泌する機序として、低酸素刺激後早期(24時間程度)にはHIF依存的機構によって、一方後期(48時間以降)にはHIF非依存的機構によって、HISP2の発現が誘導されることを見出した。担がんマウスを対象にしたインビボ実験で、血漿内のHISP2レベルが「腫瘍内低酸素の量」と正に相関することを見出した。HISP2ががんの放射線抵抗性を亢進する機序として、EGFR-Nrf2経路の活性化を介することを明らかにした。以上の研究を論文にまとめて報告した(Suwa T et al. JCI Insight. 2021; Haitani et al. Cancer Lett. 2022; Suwa T et al. Exp Mol Med (NPG). 2021など)。
1: 当初の計画以上に進展している
2021年度に予定していた研究計画をすべて終え、JCI Insight誌に論文を報告した。また、当初の計画を上回って、当該基礎研究を出発点とするヒトを対象にした臨床研究に既に着手したから。
ヒトを対象にした研究を通じ、腫瘍内低酸素画分と血漿内HISP2レベルが相関するかを検証する。また、血漿内SPINK1レベルでモニターできる腫瘍低酸素を基に、がんの早期発見が可能になるかを検証するヒトを対象にした研究に着手する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Cancer Lett
巻: 528 ページ: 76-84
10.1016/j.canlet.2021.12.028.
Exp Mol Med (NPG)
巻: 53 ページ: 1029-1035
10.1038/s12276-021-00640-9.
Cancers
巻: 13 ページ: 2813
10.3390/cancers13112813
JCI Insight
巻: 6 ページ: e148135
10.1172/jci.insight.148135.
http://www.rbc.kyoto-u.ac.jp/cancer_biology/