研究課題/領域番号 |
20H03625
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中村 教泰 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10314858)
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研究分担者 |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 教授 (00258401)
中村 純奈 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10821944)
望月 ちひろ 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80831875)
水野 拓也 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (90398826)
KIM HYUNGJIN 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80711457) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 有機シリカナノ粒子 / セラノスティクス / 悪性黒色種 / 温熱治療 / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
近年、ナノテクノロジーを駆使した新しいナノ医学が提唱され、研究が活発に進められている。そして複数の治療を融合できる多機能化ナノ粒子の応用による新たな治療法の開発に期待が高まっている。本研究では相乗効果が期待される放射線治療と温熱療法の融合と共に、X線と近赤外蛍光を用いた画像診断による“治療と診断の一体化”が可能なマルチ温熱・放射線セラノスティックス・ナノ粒子を開発する。悪性黒色腫を対象とし、悪性黒色腫最細胞に対して高い結合活性を持つ標的化分子を探索・活用し、粒子の集積性を高める。本研究を通じて革新的な次世代型がん治療法を開発する。 令和2年度は、マルチ温熱・放射線セラノスティックス・ナノ粒子の開発と評価を中心に行う。近赤外蛍光イメージング・ナノ粒子をベースにし、EPR効果に適したサイズの粒子を作製する。近赤外蛍光イメージング・ナノ粒子表面に金ナノ粒子と酸化鉄ナノ粒子を結合する。評価については電子顕微鏡と動的散乱法等を行う。得られた知見を基に臨床開発に重要な高効率な大量合成系の開発を進める。そして治療効果の評価を行う。粒子レベルで活性酸素産生能と発熱効率を測定する。In vitro評価として悪性黒色腫の株化細胞であるB16細胞を用いた細胞増殖能測定、in vivoでは同細胞の担がんマウスを作製し、各治療効果の単独、併用効果の評価を行う。さらに悪性黒色腫細胞に対する標的化分子の選定を開始する。標的化分子の結合は、DLS、フーリエ変換赤外分光光度計、熱質量分析で評価する。B16細胞への結合能は蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーで測定する。さらに細胞内局在と治療効果の相関解析に向けた粒子局在の微細精密観察への展開を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチ温熱・放射線セラノスティックス・ナノ粒子の開発について近赤外蛍光イメージング・ナノ粒子をベースにし、EPR効果に適したサイズの粒子を作製することができた。近赤外蛍光イメージング・ナノ粒子表面に金ナノ粒子と酸化鉄ナノ粒子を結合し、電子顕微鏡や動的散乱法等で評価できた。スケールアップによる高効率な大量合成系の開発を進めることができた。さらに治療効果の評価として放射線治療増感効果、さらに粒子レベルでの発熱効率の評価を行うことができた。In vitro評価において悪性黒色腫の株化細胞であるB16細胞を用いた細胞増殖能測定により有望な結果が得られた。in vivoでは同細胞の担がんマウスの作製も検討をすすめることができた。悪性黒色腫細胞に対する標的化分子の選定やその機能化において重要な粒子表面の前処理について検討をすすめることができた。B16細胞への結合能についても蛍光顕微鏡での測定を行った。さらに細胞内局在と治療効果の相関解析に向けた粒子局在の微細精密観察のため構造化照明法を用いた蛍光顕微観察を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、マルチ温熱・放射線セラノスティックス・ナノ粒子の開発を進めるとともに治療効果の評価に重点を移していく。近赤外蛍光と可視蛍光を持つイメージング ・ナノ粒子についてEPR効果に適したサイズに調整すると共に金ナノ粒子と酸化鉄ナノ粒子の結合に成功した粒子の治療効果の評価を行い、その結果に基づいてさらなる改良も進める。改良粒子は材料学的な評価として電子顕微鏡と動的散乱法、ICP 発光分光分析等を行う。メラノーマの株化細胞であるB16細胞を用いた細胞増殖能測定にて放射線増感効果の評価を進める。in vivoでは同細胞の担がんマウスを作製し、各治療効果の単独、併用効果の評価を行う。得られた知見を基に臨床開発に重要な高効率な大量合成系の開発を進める。また臨床への橋渡し研究へ展開に向けて犬を用いた治療効果と安全性の評価について獣医学部と情報交換を綿密に進め連携を強化する。さらに悪性黒色腫細胞に対する標的化分子の選定を低分子からペプチドへの展開を目指す。悪性黒色腫の種々の標的化分子を粒子に結合し、網羅的に解析し、悪性黒色腫細胞への標的化に重要な分子とその最適な結合法を明らかにする。標的化分子の結合は、DLS、フーリエ変換赤外分光光度計、熱質量分析で評価する。B16細胞への結合能は蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーで測定する。さらに細胞内局在と治療効果の相関解析に向けた粒子局在の微細精密観察のため蛍光顕微鏡を用いた 高解像観察と電子顕微鏡観察を融合した相関観察の進行をさらに加速する。
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