プレス成型によりガンマ線検出デバイスに適用可能なTlBr結晶を得るため、、前年度は成型後圧力の検討によりクラックの減少を達成したが、比較的クラックが少ないTlBr結晶を用いてもデバイスからの波高値は、僅かな改善に留まっていた。 2022年度は、TlBr結晶の品質をさらに向上させるため、成型時温度を可能な限り低温にすることでクラックの発生原因の一つであるパンチプレート表面の劣化を抑え、かつ、2段階の降温プロセスを採用した。従来までの結晶評価では、TlBr結晶表面の結晶方位に留まっていたが、当年度は厚さ約2.6mmのTlBr結晶の深さ方向に亘る結晶方位の分布を得ることができた。その結果、プレス表面では複数の方位を示したが、内部は概ね(100)が観察された。その一方、EBSDにより詳細に結晶方位面バラツキを評価した結果、5°の角度差の場合、44以上のドメインを含むことが分かった。デバイス評価では、SPECTへの応用を目指し1mmx1mmのアノード電極を3行3列有するピクセル型TlBr検出器を製作しガンマ線に対する応答スペクトルを測定した。その結果、一部のアノード電極からの出力は、読み出し不良と推測される低下が生じたが、他のピクセルからは従来までのデバイスの出力と比較して最も明瞭な応答が得られた。
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