研究課題/領域番号 |
20H03632
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
須郷 由美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員 (90354836)
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研究分担者 |
大平 慎一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (60547826)
森 勝伸 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (70400786)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射性銅 / 電気化学的分離 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標である医療用放射性銅の新規インライン分離・薬剤化システムを開発するための要素技術として、これまでに(1)金属の酸化還元特性の違いを利用した電解セルによる金属の選択的分離法と、(2)電場における金属イオンの泳動および膜透過による電気透析を利用したインライン薬剤合成法を開発してきた。 令和4年度は、これらの要素技術を組み合わせることで、分離から薬剤合成までの一連の流れを、電圧を印加するだけの簡便な操作で達成するフローシステムを構築し、安定同位体を用いたコールド実験および放射性同位体を用いたホット実験による検証を行った。 ○電解セルによるNiマトリックスからのCu分離:トレーサー量のCuを含むNi溶液をフロー電解セルに導入し、イオン化傾向の高いNiを溶出させ、イオン化傾向の低いCuのみを作用電極に捕集した。電着したCuは、作用電極の電位を負から正に変換することで、脱着し回収することができた。 ○電気透析型イオン抽出デバイスによるインライン薬剤合成:電解セルにて分離回収したCu溶液をイオン抽出デバイスに導入し、透析膜を介してドナーから配位子を含むアクセプターへと連続してCuイオンを抽出することで、インラインのセル内でCuの濃縮精製かつ標識前駆体との効率的な反応を行うことができた。 ○電解セルーイオン抽出デバイスを連結した自動化装置の試作:小型のチューブポンプや電磁弁等を組み合わせて、シーケンサから制御可能な自動化装置を製作した。 ○ホット実験による検証: Niターゲットにプロトンビームを照射すると、核反応(p,n)、(p,d)によりCu-64、Ni-57が生成する。照射したNiターゲットの溶解液を導入試料とし、試作した自動化装置を用いて、ホット実験による検証を行った。その結果、Niマトリックスからトレーサー量のCu-64のみを、全自動で濃縮精製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までは、コロナ禍での施設停止や出張制限等により、当初計画していた実験の遂行が難しい状況にあったが、令和4年度はおおむね順調に計画どおり実験することができた。特に、プロトタイプ1号機とも言える自動化装置の製作においては、業者に外注することもなく研究分担者らで自作することで、当初予定よりも前倒しで実用化に向けた研究へと進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間の最終年度にあたる令和5年度は、これまでに開発してきた電解・透析を利用した医療用放射性銅のインライン分離・薬剤化システムをさらに発展させ、電着を利用した照射ターゲットの作製を組み合わせることで、照射によるRIの製造から薬剤合成に至るまでの一連の流れを電気化学的手法により完結させたシステムの完成を目指す。
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