研究課題/領域番号 |
20H03638
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
水谷 英二 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80443034)
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研究分担者 |
水野 直彬 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (30815642)
山口 智之 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (80392158)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 染色体移植 / トリソミー / モデル動物 / キメラマウス |
研究実績の概要 |
本研究計画は、哺乳類胚・細胞間での染色体移植技術を開発することにより、ヒト染色体保有マウスES細胞を作製し、新たなヒトトリソミーモデルマウスを作出することを目的とする。このため、①異種間核移植技術を応用したヒト単一染色体移植技術の開発、②ヒト染色体保有マウスES細胞の樹立及び解析、③ヒト染色体保有マウスES細胞を用いたキメラマウス作製と解析、④目的ヒト染色体の標識法の開発、⑤ゲノム編集技術によるヒト染色体の遺伝子改変、の5項目について実施する予定である。これらの項目は順次行うのではなく、各ヒト染色体について並行して実施していく。 今年度は、マウス卵細胞質中にヒト染色体の効率的な分散方法を検討した。その結果、ヒト細胞核およびH2B-mCherry mRNAを注入したマウス卵子をノコダゾールおよびオカダ酸を添加したマウス胚培養培地で一晩37℃ 5 % CO2に設定したインキュベーター内で培養することにより、効率よく染色体の可視化および卵細胞質中の分散が可能であることがわかった。さらにこれら分散した染色体はマイクロマニピュレーターを用いた単離および他のマウス卵子に注入することが可能であった。染色体を移植した卵子は、顕微授精により精子を注入後、分裂を開始し高率に桑実胚期または胚盤胞期へ発生することが確認できた。また、上記の方法を用いて得られた胚盤胞を培養することにより、ES細胞が樹立可能かを検討した。染色体導入した胚からは、10―20% 程度の効率でES細胞株が樹立可能であった。これら樹立されたES細胞株について各ヒト染色体各所に設計した特異的プライマーを用いたPCRにより解析を行っている。現在までに10株以上のヒト染色体保有マウスES細胞を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス胚中でのヒト染色体の分散、マイクロマニピュレーターを用いた胚間での単一染色体移植および染色体移植胚からのES細胞株樹立に成功していることから、本研究のコアとなる技術については概ね確立できたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、下記の5つの項目について継続して行い、ヒト染色体異常症モデルマウスの作出を目指す。 ①前年度に確立したヒト単一染色体移植技術のブラッシュアップ。マウス卵細胞質中でのヒト染色体の効率的なラベル方法、分散方法をさらに検討する。②ヒト染色体保有マウスES細胞の樹立および解析。ヒト染色体が導入されたマウス胚をin vitroで胚盤胞期まで培養し、ヒト染色体をもつマウスES細胞株作製を試みる。各ヒト染色体各所に設計した特異的プライマーを用いたPCRと核型解析・FISHにより、何番のヒト染色体が導入されているか、また全長が導入されているかを調べる。③ヒト染色体保有マウスES細胞を用いたキメラマウス作製と解析。樹立したヒト染色体保有マウスES細胞からキメラ個体を作出する。キメラマウスは組織学的手法、デジタルPCRによるゲノムコピー数定量等を用いて各臓器へのドナー細胞寄与率とヒト染色体保持率を測定する。併せて組織よりRNAを抽出し、次世代シークエンスによるトランスクリプトーム解析やqPCRにより、ヒト染色体からの転写とその影響を評価する。さらにHE染色・免疫染色により病理学的解析を実施し、染色体トリソミーによる発生および臓器形成への影響を調べる。④目的ヒト染色体の標識法の開発。ゲノム編集ツールであるCRISPR/Cas9システムを応用して、マウス胚に導入されたヒト染色体の可視化を試み、目的染色体を狙って操作できるか検討する。⑤ゲノム編集技術による導入ヒト染色体の遺伝子改変。CRISPR/Cas9等のゲノム編集技術を用いて、ヒト各染色体上のセーフハーバー領域に薬剤耐性遺伝子のノックインを行い細胞の安定維持、選別を可能にする。これらの一連の操作により、ヒト染色体保有細胞の例数を増やす。
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