研究課題/領域番号 |
20H03640
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
下澤 伸行 岐阜大学, 高等研究院, 特任教授 (00240797)
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研究分担者 |
才津 浩智 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40402838)
横山 和明 帝京大学, 薬学部, 教授 (50246021)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 副腎白質ジストロフィー / 炎症性脱髄 / マルチオミックス解析 / 病型予測 / モデルマウス / リン脂質 / 糖脂質 |
研究実績の概要 |
副腎白質ジストロフィー(ALD)においてABCD1遺伝子変異の違いでは説明できない多彩な臨床病型がどうして存在するのかの問いに答えるために、炎症性脱髄の発症関連因子を探索し、病型予測法の開発、発症前診断・新生児スクリーニングから本症の克服に繋げる。そのために本研究では3年間で岐阜大学、浜松医科大学、帝京大学の専門家が協力して脂質メタボロームとイメージング質量分析にゲノム・トランスクリプトーム解析を統合したマルチオミックス解析により、研究代表者が集積した病型間に加え、移植前後、さらに大脳型剖検脳を用いて大脳型発症関連因子を同定を目指す。2年間に各解析チームより得られたデータのうち有力な2つの解析結果を用いて最終年度の大脳型発症予測法開発に繋げる。 ①病型間ゲノム・トランスクリプトーム解析:大脳型 vs 非大脳型患者血液由来RNAを用いた病型間のマイクロアレイ比較解析により有力な候補遺伝子を特定した(岐阜大)。最終年度は多数例の大脳型、非大脳型患者のゲノム検体を用いて当該遺伝子のバリアント比較解析を行い、病型と関連するバリアントを探索している(浜松医大)。さらに当該遺伝子とABCD1とのダブルノックアウトマウスを作成し大脳型発症マウスを創出し、炎症性脱髄の病態を解明する(岐阜大)。 ②病型間脂質メタボローム解析:ALD患者血漿と対象患者の血漿について網羅的な脂質解析を行い、ALD患者血漿中で有意に蓄積するリン脂質分子種を見出した。この分子種は女性保因者やABCD1ノックアウトマウス由来の血漿においても蓄積していないことを確認した。糖脂質に関しては、血漿では非常に微量のため、まずALD患者由来線維芽細胞におけるスフィンゴ糖脂質各分子種を網羅的に定量解析し、量的に変動をする分子種を同定することを試みている(帝京大)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALD大脳型発症関連因子を探索するために2年間で3研究室が協力して病型間比較オミックス解析を行い、2つののエビデンスを得て、最終年度の病型予測法の開発に繋げている。 大脳型 vs 非大脳型患者血液由来RNAを用いた病型間のトランスクリプトーム比較解析:マイクロアレイ解析により有力な候補遺伝子を特定した(岐阜大)。最終年度は多数例の大脳型、非大脳型患者のゲノム検体を用いて当該遺伝子のバリアント比較解析を行い、病型と関連するバリアントを探索している(浜松医大)。さらに当該遺伝子とABCD1とのダブルノックアウトマウスを作成し大脳型発症マウスを創出し、炎症性脱髄の病態を解明する(岐阜大)。 病型間脂質メタボローム比較解析:ALD患者血漿と対象患者の血漿について網羅的な脂質解析を行い、ALD患者血漿中で有意に蓄積するリン脂質分子種を見出した。この分子種は女性保因者やABCD1ノックアウトマウス由来の血漿においても蓄積していないことを確認した。糖脂質に関しては、血漿では非常に微量のため、まずX-ALD患者由来線維芽細胞におけるスフィンゴ糖脂質各分子種を網羅的に定量解析し、量的に変動をする分子種を同定することを試みた。その結果、6つのスフィンゴ糖脂質およびスフィンゴミエリンの極長鎖脂肪酸を含有する分子種が健常者に比べ有意に増加していることがわかった。この知見を元に血漿、およびろ紙血での解析法も検討している(帝京大)。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は病型に相関する因子を特定し、大脳型発症予測を可能にする。さらに炎症性脱髄の発症機序解明のため、ABCD1と大脳型発症関連遺伝子をノックアウトしたマウスを創出し、病態解明から治療法の開発に繋げる。 ① ゲノム・トランスクリプトーム比較解析:特定された候補遺伝子について、検体数を増やして検証する。さらに患者血清を用いたELISA法による遺伝子産物の定量により病型予測法の開発に繋げる(岐阜大)。また当該遺伝子を多数例の大脳型、非大脳型患者のゲノム検体を用いてバリアント比較解析を行い、病型と関連するバリアントを探索し、病型予測に繋げる(浜松医大)。 ② 脂質メタボローム解析:2年間で見いだされた新規リン脂質分子種は、現時点ではALDの臨床症状が認められる患者血漿中にのみ蓄積が認められ、女性保因者やABCD1ノックアウトマウス脳においては蓄積していないことからALDの病態の進行を反映するマーカーとなる可能性がある。今後はさらに症例数を増やして解析し、マーカーとしての有用性を検証する。さらに、当該脂質分子種の迅速なLC-MSによる測定系を開発した上で、現在研究代表者が中心となって進めているマススクリーニングと連携し、大規模に検証したい。(帝京大)。 ③ ダブルノックアウトマウス創出による大脳型発症機序の解明:大脳症状を認めないABCD1ノックアウトを用いて、①で得られた大脳型発症関連遺伝子とのダブルノックアウトマウスを作成し、大脳型発症モデルマウスを創出し、大脳型発症機序の解明、至適移植法や新規治療法の開発に繋げる(岐阜大)。
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