研究課題
巨脳症患者を対象としたパネル解析を2022年度は14例に実施し、PTN遺伝子変異5例、PIK3CAモザイク変異1例、MTOR遺伝子変異2例を同定した。患者情報とMRIを集積し、巨脳症患者データベースを更新した。脳オルガノイド実験は継続して実施しているPNPLA8、SZT2、MYCNに加えてPTENの機能喪失型変異を導入したiPS細胞を樹立し、4つの遺伝子に関して研究を継続している。PNPLA8遺伝子変異については国際共同研究を推進し、患者12名を世界中から集積し、PNPLA8関連疾患の疾患概念を確立することができた。PNPLA8は両アレルが完全な機能喪失では単純脳回型小頭症を呈するが、機能が一部保たれていれば脳形成障害を伴わない神経発達症の表現型を呈する。したがって、PNPLA8は脳形成においては完全な機能喪失が必要条件となり、そのため、一定程度の機能を増加させることで治療に結びつく可能性が示唆された。脳オルガノイド実験では外側放射状グリアの減少を示し、その原因として脂質構成の変化を同定することができた。これらの実験を通して、脳発生における脂質の役割について新しい知見を得ることができた。この点に着目して治療応用を検討している。MYCN機能亢進型変異についてはモデルマウスで脳のサイズが増加することを示した。その原因としては、神経幹細胞の増殖が更新していることを明らかにしたが、それだけでは白質容量の減少が説明できない。そこで、ヒトiPS細胞にMYCNの機能亢進型変異を導入するとともに、患者由来iPS細胞を樹立し、それぞれから脳オルガノイドの作成に成功した。このようにモデルマウスと脳オルガノイドの結果を比較検討することにより、脳サイズ決定のメカニズムに迫ることができると考えている。
2: おおむね順調に進展している
巨脳症患者の遺伝学的解析センターとしては国内随一の役割を果たしており、全国からの解析依頼に応えると共に、巨脳症患者データベースを構築し、我が国における巨脳蒋介石拠点としての役割を果たしている。iPS細胞から脳オルガノイドを作成する系を確立した。現在4つの遺伝子変異を導入した脳オルガノイドを作成し、解析を進めている。さらに、MYCNについてはモデルマウスと脳オルガノイドの結果を比較検討することにより、それぞれの特徴を生かすことで、質の高い研究ができている。巨脳症について患者集積と臨床情報、モデルマウスでの表現型、ヒトiPS細胞由来脳オルガノイド解析を連携して実施している施設は他にない。また、これらの解析を通して、脳発生における脂質の重要性を明らかにし、業績をあげている。
巨脳症の患者解析拠点としての役割、モデルマウスを用いた解析、さらに、ヒトiPS細胞から脳オルガノイドを作成して解析することで巨脳症のメカニズムを多角的に解析する役割を持続する。現在解析している、4つの遺伝子については、脳発生における役割を明らかにする。既にPNPLA8については結果をまとめて、投稿を行った。また、MYCNについても論文作成の段階にある。今後はSZT2とPTENに注力する。さらに、原因不明の巨脳症患者からiPS細胞、脳オルガノイドを作成することで、脳発生のどの部分に異常があるのかを解明することで、未診断例の解明へと発展することが期待される。ゲノム解析では解明できない例に対して、機能的なアプローチを提供することを目指す。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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