研究課題/領域番号 |
20H03647
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
八代 健太 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60432506)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心臓中胚葉 / 心臓前駆細胞 / 分化 / シングルセル解析 / エンハンサー解析 |
研究実績の概要 |
胚発生で心臓前駆細胞 (CPCs) が「自己」を確立する分子機構の知見は、先天性心疾患の分子病態の理解と、幹細胞を用いた再生医療に極めて有益である。申請者は独自の研究で、将来の心臓へ寄与する最初期の中胚葉 (心臓中胚葉) がCPCsへと分化していくまでの間の「中間状態にある細胞」が、Gfra2遺伝子と遺伝子X (知財関係で遺伝子名を公表せず) の発現を開始することを発見した。本研究は、CPCsの自己確立過程におけるシグナル、細胞間相互作用、そして分化経路を包括的に理解し、この自己確立の分子機構を解明するための基盤研究を目的とし、分化のステージをGfra2と遺伝子Xの発現開始の前後に分け、(1) CPCsの自己確立の過程におけるマウス胚に対する網羅的シングルセル解析 (scRNA-seqとscATAC-seq) と、(2) Gfra2と遺伝子Xが、CPCsの自己確立過程で発現するために必要十分なエンハンサーの同定を行う研究を展開している。令和2年度はCOVID-19 pandemic下で、動物実験・施設間の移動・研究資材の調達等で研究活動が大きく制限を受けたため、計画通りに実施できなかった要素項目が多く、研究計画の変更を余儀なくされ、研究の推進に遅れを生じている。必要な研究費は、令和3年度に繰り越し執行した。(1)の要素項目に関しては、scRNA-seqの解析用試料を調整中に止まった。(2)に関しては、マウスES細胞を用いたin vitroでのエンハンサー解析システムの構築を完了し、遺伝子Xの上流域のエンハンサー活性を確認したところまで完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、心臓中胚葉から心臓前駆細胞 (CPCs)としての自己を確立する過程を支える分子機構を解明するための基盤研究を目的とし、(1) CPCsの自己確立の過程におけるマウス胚に対する網羅的シングルセル解析と、(2) Gfra2と遺伝子Xが、CPCsの自己確立過程で発現するために必要十分なエンハンサーの解析を行う研究を展開している。令和2年度はCOVID-19 pandemic下で研究活動が大きく制限を受けたため計画通りに実施できなかった要素項目が多く、必要な研究費を令和3年度に繰り越した。 (1) 網羅的シングルセル解析:原腸陥入中期(6.5日胚)から初期頭褶期(8.0日胚)までのマウス胚に対するscRNA-seqを実施する予定であったが、COVID-19 pandemicによる緊急事態宣言・全国一斉休校・通勤制限・動物実験施設での研究活動等によりサンプルの調整ができず、遅れを生じた。データ取得用の試料の調整まで実施できた。 (2) Gfra2と遺伝子Xのエンハンサー解析:COVID-19pandemicによる研究活動制限によって、この項目にも遅れが生じている。まず、E14tg2a ES細胞株における一部欠失のあるHprt遺伝子座を利用したin vitroエンハンサー探索実験系を、先行研究(Biology Open. 2: 1229-8211, 2013)を参照し、立ち上げ作業を行った。これを用いて、遺伝子Xの上流と遺伝子Xの全exon-intronを含む約16 kbの心臓前駆細胞における転写活性を調べ、有為な活性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、最初期の未分化中胚葉から心臓前駆細胞 (CPCs)としての自己を確立する過程におけるシグナル、細胞間相互作用、そして分化経路を包括的に理解し、この自己確立の分子機構を解明するための基盤研究を目的とし、分化のステージをGfra2と遺伝子Xの発現開始の前後に分け、(1) CPCsの自己確立の過程におけるマウス胚に対する網羅的シングルセル解析と、(2) Gfra2と遺伝子Xが、CPCsの自己確立過程で発現するために必要十分なエンハンサーの同定を行う研究を展開している。 (1)CPCsの自己確立の過程におけるマウス胚に対する網羅的シングルセル解析:研究活動の制限が次第に解除され、それに伴いscRNA-seq用のサンプル調整は進展している。データを充実させるため、別目的の研究プロジェクトにて実施された解析標的ステージのマウス胚のscRNA-seqデータが本研究開始後にパブリックドメインに公開されたため、このデータも本研究で活用することとした。準備が出来次第、シングルセル・オープンクロマチン解析であるscATAC-seqを実施し、遅れを取り戻す。 (2)Gfra2と遺伝子Xが、CPCsの自己確立過程で発現するために必要十分なエンハンサーの同定:まずは遺伝子XのCPCsでの発現に十分なエンハンサー領域を同定し、マウスのトランスジェニックアッセイで個体での十分性を確認したのち、出来る限り最小の必要十分なエンハンサー 領域へと絞り込む作業をマウスES細胞を用いたin vitroの転写制御解析システムにて実施する。また、Gfra2遺伝子座に対しても同様のエンハンサー領域の探索を実施する。
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