研究課題
現在約3割もの超未熟児が血管収縮を標的とした現在の治療に抵抗性である。すなわち動脈管の閉鎖は血管平滑筋を収縮させるだけでは十分ではない。動脈管の完全な閉鎖には、血管収縮と共に“内膜肥厚形成”が重要な役割を果たす。研究代表者は先行研究で、EP4を介して細胞外マトリクスであるFibulin-1が著明に増加することを見出した。本研究では、Fibulin-1を中心とした細胞マトリクス連関に焦点を当てて動脈管の内膜肥厚形成の分子機序の全容を解明し、EP4とFibulin-1の発現誘導をもたらす機序を明らかすることで、内膜肥厚形成を促す動脈管開存症に対する新たな戦略を見出すことを目的とした。本年度はシリコンインサートを用いて動脈管平滑筋細胞と内皮細胞を配した共培養系で、平滑筋細胞の内皮細胞方向への遊走能を検討した。平滑筋細胞由来のFibulin-1、内皮細胞由来のバーシカンをそれぞれsiRNAでノックダウンし、これらの細胞外マトリクスが平滑筋細胞の方向性遊走に関与していることを見出した。さらにFibulin-1C, 1Dのリンコンビナント蛋白を添加し、siRNAで抑制された方向性遊走作用がレスキュー出来ることを確認した。Fibulin-1欠損マウス(Fbln1-/-)の新生児動脈管を用いてエラスチカ染色を行ったところ、内膜肥厚形成が低下しており、動脈管開存症となっていることが明らかとなった。バーシカンのヒアルロン酸結合部変異マウス(VcanΔ3/Δ3)の動脈管でも30%が動脈管開存症となっていた。これらより、動脈管閉鎖には、Fibulin-1、バーシカン、ヒアルロン酸による平滑筋の方向性遊走が関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
複数の細胞外マトリクスの平滑筋細胞の方向性遊走に対する作用の検討、in vivo実験が順調に完了した。
細胞外マトリクス受容体シグナルが平滑筋細胞の方向性遊走に及ぼす作用の検討を行ってゆく予定である。RHAMM、TLR4、インテグリンを中心に阻害薬やsiRNAによるノックダウンを用いて共培養系で平滑筋細胞の遊走能を検討する。また、遺伝子改変ゼブラフィッシュとレポーターマウス、ヒト動脈管サンプルを組み合わせて、EP4とFibulin-1の発現を制御する機序を明らかにするとともに、これら分子の発現を増加させる化合物を同定する予定である。
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