研究課題
本年度は、課題の2年度として十分な進捗が認められた。課題初年度には、ヒト腸細胞が、我々の開発した特殊な培養法で、再現性を持って多数のサンプルで培養可能であること、さらにこれらの細胞が胎児腸上皮細胞に近似することが明らかとなり、本課題の重要なテーマである「細胞レベルので若返り」に関するエビデンスを構築することができた。その胎児性を明瞭にするため、本課題では腸が発生する内胚葉原基に由来する他の代表的臓器である肝臓を形成する肝細胞系譜への誘導、ならびにその逆ベクトルの肝細胞からの腸上皮細胞誘導の可能性を検証する予定であるが、特殊な培養条件で遺伝子操作を経る事なくHepatocyte系譜のフェノタイプを獲得できる可能性を明らかにする事ができた。2021年度においては、複数のサンプルにおいて追試・確認を行うなどの実績を上げることができた。腸上皮細胞と肝細胞という一見全く異なる細胞の互換性の検証は、従来のiPS細胞を主に研究対象とする医学・再生医療研究において、大いに発展性を有している。細胞機能解析や運命変換のメカニズムに特化・深化させた新しい研究テーマの創出など、今後ますますの発展が期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
課題2年目にあたる2021年度には、初年度に確認した、ヒト成体腸を胎児化する方法の検証と、胎児性の担保としての類縁系統組織への誘導検証を目的とするパイロットスタディーを複数のサンプルで追試・確認し、フェノタイプが肝細胞に類似した形質を有する細胞の誘導が可能であることを示す成果を得ることができた。さらに体内でのフェノタイプ解析に重要な移植システムも効率的に改変し、本課題に応用可能なシステム構築を終了できた。よって本研究は当初の計画以上に進展している。
今後は肝細胞様細胞の性状を移植アッセイなどにより解析する予定である。また腸→肝と逆ベクトルの検証、すなわち肝細胞を胎児化し、腸型細胞系譜へ誘導する試みも既に開始しており、特殊な培養系を樹立している。臨界点を明らかにするとともに、腸・肝臓という同じ原腸に由来する臓器の発生学上において共通する胎児幹細胞の同定を行う。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Nature Protocols
巻: 17 ページ: 649~671
10.1038/s41596-021-00658-3
CMGH
巻: 12 ページ: 789,790
10.1016/j.jcmgh.2021.04.008