研究課題
挿入変異型トランスポゾンを用いたNASH肝癌ドライバー遺伝子の網羅的スクリーニング系により同定したNASH由来肝癌ドライバー遺伝子候補の中から、がん抑制遺伝子として機能していることが想定される50遺伝子を選択した。これらを標的としたgRNA270本を設計し、SleepingBeautyトランスポゾン(SBT)ベクターにクローニングしてプール型CRISPRライブラリーを作製した。また、任意の時期に肝細胞でCas9を発現させる為、タモキシフェン誘導型肝細胞特異的Cre転移酵素発現マウス(Alb-CreER)とCas9のKnock-Inマウス(ROSA26-LSL-Cas9)を交配したマウスを作成した。さらに、このマウスをKras活性化Pten欠損マウス(Kras G12D/+;Pten flox/flox)と交配した。これにより作成したマウス(Alb-CreER;ROSA26-LSL-Cas9;Kras G12D/+;Pten flox/flox)はタモキシフェン投与後約4ヶ月において肝腫瘍を形成することを確認した。一方で、投与後約2ヶ月例では腫瘍形成を認めなかった。そこでこのマウスの肝細胞内に、尾静脈急速静注法(HTVi法)によりライブラリーとトランスポゾン転移酵素発現ベクターを導入した。ライブラリー導入後、タモキシフェン投与によりCas9発現を誘導することで、各肝細胞で組み込まれたgRNAの標的遺伝子に欠損を生じさせた。6週後に解析を行ったところ、ライブラリー導入マウスにおいて肝腫瘍形成が認められた。一方Negative control gRNAを導入したマウスでは肝腫瘍形成は認められなかった。ライブラリーの導入により肝腫瘍形成が促進されたことから、これらの遺伝子が肝腫瘍形成に抑制的に働いていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画で想定したライブラリーの作成、マウスの作成、それを用いたスクリーニングにより肝腫瘍形成を得るところまで、想定内に進んでいる。
1年目で樹立した生体内検証を行うためのマウスモデルを用いて、二次スクリーニングを行い、得られた腫瘍のシークエンス解析を実施する。これにより、50遺伝子からNASH肝癌のがん抑制遺伝子候補を更に数個の遺伝子に絞り込む。絞り込んだ遺伝子群については、個別のgRNAを用いてこのマウスモデルを用いて検証を行う。個別の検証系においては、形成された腫瘍の分子生物学的解析から、発がんにおける各遺伝子の役割を解明する。
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