研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(IBD)の病態には、T helper (Th)細胞の中でも特にIFN-g産生性Th1細胞およびIL-17産生性Th17細胞の関与が報告されてきたが、これまでのIFN-bやIL-17を標的とした生物学的製剤の効果は期待通りの効果に乏しく、IBDの治療には単一のエフェクターサイトカインやT細胞サブセットではなく、Th細胞サブセットの垣根を超えた炎症惹起性シグナルを標的とする全く新しい治療アプローチの開発が必要である。申請者は、各種の血球系細胞におけるDeep-sequencingを用いたmiRNAの網羅的発現解析データの再解析を行い、血球系細胞において100TPM以上発現の認められた375種類のmiRNAのうちで、リンパ球に特異的に発現する49種類のmiRNAを同定した。さらに、19/49種類のmiRNAがTh細胞特異的に発現し、中でもmiR-221/2がTh1, Th17細胞に選択的に発現する事が明らかとなった。実際に、naive T細胞をTh1, Th17(b) (IL-6 + TGF-bにより誘導したTh17), Th17(23) (IL-6 + IL-23により誘導したTh17), iTregに分化誘導し、Deep-sequencingを用いたmiRNAの網羅的発現解析を行ったところ、Th1、Th17(23)においてはmiRNA-221/2は高発現していたが、naive T細胞やTGF-bにより誘導されたTh17(b)およびiTregではほとんど発現が見られなかった。このことから、miR-221/2の発現には、IL-6、IL-12、IL-23などの炎症惹起性サイトカインにより発現が強く誘導され、一方でTGF-βにより発現が抑制されると考えられた。
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